第3話 ファースト・ブラッド 2



火花 と剣の間に——

対極にある二つの精霊が、互いに刃を交えていた。


ガキィン!

剣が激しくぶつかり、二人の精霊は弾き飛ばされる。


シュルルル…バチィン!

アナジェが宙で体を回転させ、湾曲した剣から青白い雷を放つ。


ヒュッ!

花子さんは血のように赤い優雅な細剣を掲げる。

ブシャアアッ!

血の奔流が深紅の盾へと姿を変える。


ビシャアアアアン!

雷撃が血の盾にぶつかり、紅い霧が爆発する。


スウウ…

血は生きているかのように彼女の剣へと戻る。


着地の前に——

ビュン!

彼女が電光のごとく突きを放つ!


バシュッ!バン!

血の弾丸が魔弾のように放たれる。


キィン!

アナジェは空中で一刀両断する。


ドスン!

両者は地面に着地する。


ゴォォォッ!

そして一瞬で再び突進——剣が轟音とともにぶつかる!


ガアアアン!!




ヒロ(息を切らしながら):「す…すごい…!

この二人の力とオーラ、まるで空気そのものが重く、濃く…!

体が崩れ落ちそうだ…!」


彼の長い髪が、周囲の圧力で揺れる。


ジンタ(歯を食いしばりながら):「このクソ女が…!

俺と戦ったときは、こんな力をまったく見せなかったぞ!」


風が彼の髪をかき乱すが、恐怖がそれすら忘れさせる。




まだ斬り合いの最中、花子さんは**ドンッ!**と空いていた手で打ちかかる。


スッ——

アナジェは紙一重で頭を逸らし回避。


シャキン!

彼はすかさず猛撃で反撃。彼女は後退を強いられる。


ズザザザッ!

地を削りながら踏ん張る花子さん。獣のように剣を構えるアナジェ。




宙で、花子さんは回転し——

バシュッ!バン!バシュッ!バン!バシュッ!バン!

連続で血の弾丸を放つ。


ヒラリ!ヒュン!スパッ!

アナジェは華麗なバク転と斬撃でそれを回避。

ガラガラ…ドカーン!

その後、雷を放って反撃!

バチバチバチィッ!


ゴロッ!

花子さんは地面を転がり、かろうじてかわす。

雷は背後の木々に命中し——


ドカーン!ズゴゴゴゴォン!!

木々が爆発し、火花と炎に包まれる。




花子さん(首をコキ…と鳴らして):「あなた、理性を失ってきたんじゃない?」


その金色の瞳は裂け目のように光る。


アナジェは仮面の奥で、息を荒げている。


アナジェ(唸りながら):「グルルルル……」


キュィン!

彼が剣を回して再び斬撃を飛ばす!




バシュッ!

花子さんも同時に血の弾丸を放つが——


キィン!

アナジェはそれを空中で真っ二つにし、そのまま突撃を継続!


ギャアア!ガチィン!

再び剣と剣がぶつかる!火花が舞う!


スッ!

花子さんが身をひねり、アナジェの刃を上に弾く。


ドンッ!

彼の腹部に強烈な蹴り!


ドゴォッ!

アナジェは吹き飛ばされるが——

クルン…ドスン!

空中で回転し、見事に着地!


ゴォォ!

なんと、剣を彼女に向けて投げる!


花子さん(冷たく):「読めてた。」


カンッ!

彼女は簡単に弾くが——


フシュウウッ!

アナジェはすでに宙に跳んでおり、剣を空中で掴んで旋回!


ズバァッ!

鋭い一撃を叩きつける——


ガガガン!!

花子さんが防御するが、雷光が剣を這う!


アナジェ(絶叫):「グラアアアアアアアアアッ!!!」


バリバリバリィィィンッ!!

蒼雷の爆発が二人を包み、広場全体を青白く染める。


ブゥゥゥン……!

大地が震えた。

ヒロとジンタは思わず後退し、目を覆う。




……沈黙。


シィィィ……

煙が薄れていく。


ドサッ…コロコロ…

花子さんが転がり、煙と火花の跡を残す。


だが——

クルッ…ズサァァ!

彼女は回転し、優雅に着地。


シャキィン!

血を纏った細剣を構え、猛然と突進!


ガギィン!

アナジェが受け止める!

スパッ!

剣を弾き飛ばす!


ズバーン!

横一文字の斬撃!


ヒュッ!

彼女は空中回転でかすめるように回避。


トン!

着地して即、反撃!


ガキィン!!

またも剣がぶつかる!火花が飛び、影が舞う。




花子さん(笑いながら):「さすがマヤの戦士ね。

さあ、アナジェ——この舞を最後まで見せてくれるかしら?」


ドンッ!

彼女の蹴り!


ズサッ!

アナジェは身を低くして回避!


グルルル…ゴォッ!

獣のように突進!

その筋肉が張り詰め、仮面の奥の瞳が輝く!


アナジェ(咆哮):「ウウウウウアアアアアアッ!!」


二人が走る——

ガキィン!ギャアア!ピカッ!

剣が閃光を描く。時が止まる。


……沈黙。


そして——


ブシャアアアッ!!


後方の噴水に血が舞う!


二人は立ち止まり、ゆっくりと向き合う。

腹部に傷が走り、血が滴る。

だが、まだ立っている。




ヒロ(呆然としながら):「今…彼女、踊りって…言った…?

この動き、この激しさ……

これが舞?

…俺の目には、現実を超えた戦いにしか見えない……

す…すごい……!」


花子さん(笑顔で、楽しそうに)

「あなたの血も…たぎってるんでしょう?

ふふ、良いことよ。だって、私のもよ。」


彼女は腹から血を流しながらもラピエールを掲げ、アナジェに向けて構える。


アナジェ(唸りながら、息を切らして)

「グルルル……!」


彼もまた剣を持ち上げ、傷口から流れる血が足元に赤い水たまりを作る。


花子さん(凛とした口調で)

「覚悟しなさい。」


フォオオオ……ッ

風が吹き荒れ、二人の長い髪が金と銀の蛇のように舞い踊る。

背後では木々が静かに燃え、火の粉が戦場を漂う。


ブシャアアアッ!

花子さんの身体が血の奔流に変わり、空中で蒸発する。


グジュッ!――ヒュン!

一瞬でアナジェの足元の血溜まりから現れ、影のように出現し突きを放つ!


シャアアッ!!

圧縮された血のビームが走るが、アナジェは紙一重で避ける。


バキャッ――ドバアアアッ!!

ビームは噴水の上部を切断し、大きな音とともに崩れ落ちて水面に沈む。


アナジェ(咆哮)

「アアアアアアアアッ!!」


ズズズ……ギャアッ!

剣を地面に引きずりながら振り上げ、激しい斬撃を放つ!


ヒュッ!

花子さんは軽やかに跳躍し、攻撃をかわす。


キィン!

彼女は頭を狙って反撃の突きを放つ。


クルッ――ドスン!

アナジェはバク転で後退するが――その空中、足が上にある状態で!


ドンッ!

花子さんは彼の足を踏み台にしてさらに高く跳ぶ!


クルクル――シャキィン!

空中で剣が血を纏いながら輝きを放つ。


花子さん

「ブラッディ・カット。」


フォオオオオオオオッ!!

月光が彼女の身体を照らし、天空からスパイラルで舞い降りる。

剣は血のリボンのように渦巻きながら落ちてくる!


ガキィィィィン!!

アナジェはその一撃を剣で受け止める!


パチパチパチッ!

刃の間で火花が踊る。


グギィィ……ドガアアアアン!!

衝撃でアナジェは吹き飛ばされ、転がりながら地面を滑る。


ドスン――ミシミシ――ドゴォン!!

彼の身体は木を一つ、また一つと貫き、粉々に砕く!


ジンタ(笑いながら叫ぶ)

「ハハハハハッ! ざまぁみろ、このクソ戦士が!」


ヒロ(叫びながら)

「ア、アナジェェェェェ!」


しかしその名が言い切られる前に――


グルァアアアアアアアアアアアアアアッ!!

獣のような咆哮が破壊の中から響く!


バチバチッ!

月の光の下、アナジェの剣が輝き、赤い目が燃え上がる。


フォオオオオム!

彼は月を蹴るかのように回転ジャンプし、雷の如き速度で花子さんへ突撃!


ガチィン――シャアッ――パチパチパチッ!

空中で剣がぶつかり、二人は至近距離で睨み合う。


ドガアアアアアン!!

爆風とともに砂煙が吹き上がる!


シュッ!ズバッ!ヒュンッ!

煙の中からアナジェの剣が閃き、連撃を繰り出す!


花子さんは——

バク転!スピン!華麗なステップで回避!


ドンッ!

顔面への蹴りを狙うが――


ガシッ!

アナジェがその脚を素手で掴む!


アナジェ(唸りながら)

「グルァァァアアアアアッ!!」


ドゴォォン!!

彼は彼女を地面に叩きつけ、大地を砕く!


クルッ――シュバッ!

一連の動きで剣を振り、頭に突き刺す!


ドスンッ!

剣が花子さんの“体”を貫き、地面に突き刺さる!


ジュウウウウウ……

だが、それは血に変わって崩れる――分身だった。


花子さん(本物、出現)

「いりえぇぇえええ!!」


クルクル――ブシャアアアッ!!

噴水から出現し、ラピエールから血の波動を放つ!


バチバチッ!

それを予見したアナジェは剣を地に擦り、雷を放つ!


バチッ――ドカーン!!

二つの力が中央でぶつかり合い、蒼白い爆発が生まれる!


ズゴオオオオオオオン!!!


ブゥゥゥン……

土煙がすべてを包み込む。静寂。


サァァァ……

風が吹き抜け、焦げた葉が舞う。


そして――


ドスン。

二人が煙の中から現れ、無言で見つめ合う。


アナジェは息を切らし、体を少し前に傾け、血を流している。


だがその目……その目は燃えていた。

炭のように。

獣のように。

捕食者のように。


ヒロとジンタの背筋に寒気が走る。


まるでその金の仮面の裏には……

戦士などではなく、

ただ血に飢えた野獣がいるようだった。


花子さん(笑いながら、嘲るように)

“「アハハハハ! あなたって、その少年を守る存在じゃなかったの?

でも、実際に彼を怯えさせてるのは……あなただけじゃない。皮肉よね?」”


彼女は噴水の縁にバランスよく立ち、金色の長い髪が風に揺れ、空中で蛇のように舞う。


アナジェ(唸りながら)

“「グルルル……」”


一瞬、戦士は深く息を吸い込む。

その激しい呼吸が徐々に落ち着いていく。


燃えるように赤く輝いていた瞳も、次第にその獣の光を失っていく。


彼はゆっくりとヒロの方を向く。


アナジェ(静かに)

「安心しろ、ヒロ……まだ完全には理性を失っていない。少なくとも、今は。」


ヒロ(震えながら)

「う、うん……」


その言葉に安心するどころか、ヒロの恐怖は消えなかった。

体が震えている。目は見開かれたまま。


ドクン。

ドクン。

鼓動が激しく、不規則に鳴り響く。


胸を押さえ、不安を抑えようとする。

だが、彼の目は虚ろで揺れていた。


彼は明らかに——

怯えていた。




花子さん:(笑いながら、皮肉めいて)

「アハハハ!」


彼女は腕を上げ、アナジェを指差す。


花子さん:(嘲笑しながら)

「本気でそんなセリフで人間を落ち着かせられると思ってるの?

だいじょうぶ”、 “心配いらない”、 “落ち着け”…?

アハハハハ! そんなの、花火の真っ只中にいる子猫に言うのと同じくらい無意味よ!」


彼女はラピエールを優雅に回しながら、噴水の縁を軽やかに歩く。


花子さん:

「嫉妬と並ぶもう一つの人間の本能……それは、恐怖。

それがあるから、危険を避けて、少しでも長く生き延びるのよ。」


剣は手の中で回転を続け、彼女の一歩一歩がまるで死の舞踏のように美しい。


花子さん:

「理解できないものに怯え、恐れを抱く。

それが彼ら。

まるで花火に反応する猫や犬のように……

わかるかしら?」


彼女は剣先をアナジェに向け、黄金の瞳を輝かせる。


花子さん:

「その少年……

彼があなたを信じることはないわ、アナジェ。

あなたの本性を見た今は、なおさらね。

その本能……殺すため、すべてを喰らうための衝動を!」


その唇がゆがみ、声が嘲りに満ちる。


花子さん:

「人間が虎に手を差し伸べると思う?

あるいは、野生の熊に?」


風が吹き抜け、二人の髪が揺れる。

霊と人間の対比が際立つ瞬間だった。




アナジェ(低く、真剣に):

「わかってる。

人間が虎や熊に手を差し伸べることなんてない……」


彼女の足が止まる。雰囲気が変わる。


花子さん(挑発的に、困惑しつつ)

「じゃあ、何を求めてるの?

誇りある狩り?

互角の戦い?

敵の血?

あっ、わかった! 伝説的なバトルのクリーシェかしら—」


アナジェはため息をつく。


彼は空を見上げ、静かに、しかし深い思いを込めて口を開く。


アナジェ:

「俺は……贖罪を求めてる。」


……沈黙。


一瞬、

広場全体が深い静けさに包まれた。


噴水から流れ落ちる血の音だけが、静かに響いている。

火の粉が静かに降り注ぎ、遠くの木々が燃え続ける。

風が優しく吹き抜ける。



その場にいるすべてが——

花子さんさえも、

沈黙した。




花子さん(軽蔑の表情で、鋭く):

「贖罪……? どういうつもり?」


顔をしかめながら、まだ剣をアナジェに向けている。


花子さん(刺すような声で、怒気を帯びて):

「自分で選んだわけでもないその姿に、贖罪を求めてるの?

元からそういう存在だった自分に、許しを得ようとしてるの?!

答えなさいよ!」


シャキィィン!

剣が怒りに震え、周囲の炎を反射して輝く。




アナジェ(自らの爪のついた手を見つめながら):

「そうだ……

お前の思ってることとは逆に、俺は自分の意思でこうなった。

大切な人たちを守るためには、こうするしかないと思ってた。

でも結局は……死と血と、呪いしか残らなかった。」


彼は拳を強く握る。


メリメリッ!

爪が自身の手に食い込み、血がにじむ。


アナジェ(苦々しく、静かに):

「俺のことを愛してると思ってた人たちも……

最後には、血に飢えた獣としてしか見なかった。

ただの武器として……敵を殺すだけの存在として。」


ポタ……ポタ……

血が地面に滴る。拳は憎しみに震える。




アナジェ(ヒロの方を見ながら):

「だからな、ヒロ……

お前だけが怖がってるわけじゃない。

実は……俺も怖いんだ。」


ヒロ(目を見開き、驚いて):

「えっ……

あ、アナジェが……怖がってる?

こ、こんなに強くてカッコいい戦士が……なんで?」




アナジェ(夜空を見つめながら):

「さっき、マリアが言ってたこと——その通りだ。

恐怖ってのは、人間が生きるための本能だ。

俺が生きてる理由……

それも結局、恐怖なんだ。」


彼は剣を片手にしっかり握りしめる。

もう一方の手からは、血が静かに流れ続けていた。


花子さん(苛立ち、唸りながら):

「恐怖…?

後悔してるの?

罪悪感で?

人間の“判断”ごときで、後悔してるっていうの!?」


フォオオオッ!!

周囲の空気が急に重くなる。


アナジェは黙ったまま、空を見つめ続けていた。


そして――


アナジェ(冷たく、はっきりと)

「そうだ。している。」




シィィィィ……

花子さんの怒りが、静かに、しかし暗黒の波となって放たれる。


彼女のオーラが深紅と黒に脈打ち始める。


ブシュウゥゥッ! ドンッ!!

公園中に広がっていた血が震え始め、動き出す。


グジュッ…グジュッ…フォオオオオッ!

すべての血が、まるで彼女の怒りに従うように、ラピエールの刃へと吸い込まれていく。


彼女は噴水の縁から静かに飛び降りる。金色の髪は、炎のように風に舞っていた。


花子さん(怒りを押し殺しながら):

「終わらせましょうか…マヤの偽者。」


その剣は赤黒く輝いていた。

凝縮された生きた血液そのもののように。




アナジェは湾曲した剣をしっかりと握る。


ガリガリガリィィィィン――バチバチバチッ!

剣を背後に振ると、野生の雷が刃を這い回る。


ゴゴゴゴゴ……グラグラッ!

大地が足元で震える。石畳にひびが入り始める。

そして空は――

黒き雷雲で閉ざされる。


彼は歯を食いしばる。

その身体は震え、空気までもが焦げるような電気に包まれる。


ジジジッ――ズガガァン!!


アナジェ(怒号):

「グルルルルル……アアアアアアアアアッ!!」


バリバリバリィィィン!!!

剣から放たれる雷。

その目は再び紅く燃え上がる――

古代の怒り、獣のような輝き。


戦場の緊張は頂点へと達した――


これは終わりであり、始まり。




二人は静かに向き合う。


まるで、朝日のもとで撃ち合うガンマンのように。


空気には、焦土の煙と木々の残骸。

風が枯れた枝を吹き飛ばし、月が二人を照らすスポットライトのように輝く。


青と赤。

贖罪と嫉妬。

ここで、相まみえる。

生き残れるのは一人だけ。


ヒロも、ジンタも、言葉を失っていた。

ただ息を荒げながら、冷や汗を流す。


ミシミシッ!

地面が、二人の足元から割れ始める。


二人は足を強く踏み込み、構える。


空気が震える。


アナジェは両手で剣を握る。

花子さんはラピエールを回し、周囲の血が赤い蛇のように舞う。




花子さん(怒りと炎に満ちた叫び):

「あなたの贖罪の道は、ここで終わりよ、アナジェェェェェェェ!!」


アナジェ(野獣のような咆哮):

「グルアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


ドンッ! ドンッ! ドンッ!


地を踏み鳴らしながら、二人は突進する。


二つの彗星。

二つの信念が、衝突する。


青き雷と、赤き血潮が交わり――


ドオオオオオオンッ!!!


ガアアアアアアン!!!


刃が衝突する。

その瞬間、赤と青の魔力が広場の中心を包む。


噴水が、蒸気と血に変わって吹き飛ぶ!


ゴォォォォォォォッ!!


その衝撃は、即座に嵐を呼び、爆風となる!


ヒロ(叫びながら):

「うわあああああ!!」


ジンタ(パニック状態):

「ぎゃあああああああっ!!」


二人は、まるで枯葉のように、吹き飛ばされる。


粉塵が舞い上がる。


月の光さえ、闇と雷の渦に飲まれていく。





空には黒雲が集まり、月を覆う。

そして——


ポツ…ポツ…ポツ……

最初の雨粒が落ち始めた。


広場の中央、崩れた噴水の跡地にて。

あたりは静寂に包まれていた。


ヒロとジンタは動けず、ただ霧の奥を見つめていた。


フォオオオ……ッ

雨と風が、ゆっくりと粉塵を払っていく。


そして――


二人の姿が現れる。

アナジェと花子さん、背中合わせに立っていた。


互いに深い斬撃を受けていた。


静かに、ただ雨の音だけが響く。




アナジェが立ち上がる。


彼は最後に剣を一回転させ——シャッ!

そして、鞘へと納めた。

青白い火花と共に、剣は消える。


その背後で——


ゲホッ!!

花子さんが喉から血を吐き出す。


ドサッ。

彼女の身体が地面に倒れ、血が広がっていく。


ビチャッ!

さらに血が口から溢れ出し、雨に混じって地面に染み込む。


花子さん(かすれた声で):

「……くそ……」


彼女はうつ伏せになりながら、アナジェの背中を見つめる。


花子さん(笑いながら、吐息混じりに):

「ふふふ……最後の最後まで……私は嫉妬で死ぬなんて。

皮肉ねぇ……?」


アナジェは振り向かない。

雨の中、静かに立ち尽くす。


花子さん:

「結局ね、アナジェ……

私たち霊魂は、すでに運命に縛られてる。

それを変えられると思うの?

自分の本能を、制御できると?」


彼は答えなかった。

ただ、沈黙のまま立ち尽くす。


彼女は苦笑いを浮かべながら、かすかに息を吐く。


花子さん(声が薄れていく中、微笑みながら):

「あなたって……本当に、尊敬に値する存在よ……」


ラピエールを手放し、

金色の長い髪が顔にかかる。

目を閉じて――

その微笑みを保ったまま。


そして雨は降り続ける。




マリア・アウグスタは死んだ。


タップ…タップ…

濡れた広場に、ゆっくりとした足音が響く。


それはジンタだった。

倒れた霊の体へと近づいていく。


ジンタ(低く、怒りに満ちた声で)

「俺はお前を信じてた……

全てを、お前に捧げたのに。」


彼の拳が強く握り締められる。


ジンタ(絶望と憎しみで叫びながら):

「それなのに……

負けて死ぬだと!?

バカなっ!!」


ドスッ!

彼はマリアの体を蹴り飛ばす。


ジンタ(狂気じみて叫ぶ):

「このクソババアァァッ!! なんで負けんだよ!?

クソがっ!

地獄で燃え尽きちまえよ!!

クソアマがぁぁ!!」


彼は激しく何度も蹴り続ける。


ドスッ! ドスッ! ドスッ!


その一撃一撃に、ヒロの血が沸き立つ。


彼の目には怒りが宿る。

震える手に、抑えきれない感情がこもる。


ヒロ(叫ぶ):

「やめろよッ!!」


ジンタは一瞬動きを止め、

怒りに満ちた目でヒロを睨みつける。


ヒロ(睨み返しながら):

「彼女はお前を守るために、全力を尽くしたんだ…

お前みたいな最低なやつのために…

それなのに……

こんな仕打ちかよ!?

蹴って、罵って、侮辱して…それが感謝の形かよ!?」


ジンタ(怒鳴りながら近づく):

「お前に……彼女の何がわかるってんだよ!?

このクソガキがァ!!」


だが――


ドスン。

アナジェが、ヒロの前に立ちはだかる。

まるで鉄壁の壁のように。


アナジェ(冷たく、殺気を帯びた声で):

「もし手を出したら……

次に失うのはそのチ○ポだ、坊主。」


ズギィィィィンッ!

アナジェの目が、真紅の光を放つ。


ジンタの顔が一気に青ざめる。


ジンタ(恐怖で絶叫):

「うわあああああああああああッ!!」


彼は転げるように逃げ出し、

足をもつれさせながら必死に走り去る。


その途中で、ナカムラのパンツを落としていく。




ヒロ(アナジェに駆け寄って):

「ア、アナジェ! 大丈夫!? 無事!?」


アナジェ(振り返り、真剣だが優しい表情で):

「俺なら大丈夫だ。

だが君は? ケガはないか?」


ヒロ(少し笑いながら):

「う、うん……なんとか……」


アナジェ(ほっとしたように):

「それなら、良かった……」


ドサッ。

突然、アナジェが膝をつく。

肩は重く垂れ下がり、全身に疲労がのしかかる。


ヒロ(焦って):

「ア、アナジェ!?

アナジェー!!」


彼は隣にしゃがみ込み、必死に支えようとする。


アナジェ(微笑みながら、空を見上げて):

「大丈夫さ……

ただ、少し……休んでいるだけだ。

そうさ、休息だ……」


雨粒が彼の顔に落ちる。


かつて燃え上がっていた木は、

今は煙をあげながら静かに鎮火していた。




戦場が、静寂に包まれる。


水が瓦礫の間を流れていく。

悲劇が幕を閉じた。

雨が血を洗い流す……

それと共に――戦いも、終わった。








【あとがき】


「ふぅっ…!やっとこの3話と導入編の全体を完成させることができました!

正直、かなり大変で時間もかかりましたが、それでもすごく楽しくて、全力で取り組んで、たくさん考えて、ワクワクしながら書きました。


もし「カーニバル・ハーレム!」のこの3話を読んで、少しでも面白いと感じたら…

ぜひ感想や応援コメントを書いてくれると嬉しいです!

それが次を書く大きな励みになります!」


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