第2話 図書館に来たメール

「じゃあ、ハジメくんのメモと推理すいりから、わかったことを話すね」


 ヤマグチさんが教えてくれたのは、こんなことだった。


「まず、このハジメくんのメモについてだけど。 ―—」


 NGS-2022/ID147

 H.KAMISHIRO


「ハジメくんは、『これは、友だちのおじいさんが飼っていた”鷹”につけられた番号かもしれない。その鷹を探したい』って言ってたよね」


 そこで、ヤマグチさんは鷹を飼っている人たちが登録している町のお役所に、問い合わせてみたんだって。


 すると、メモの意味がはっきりわかった!


 NGS-2022 / ID147 →

  鷹が登録とうろくされている町の名前(りゃくしてNGS)、鷹を手に入れた年(2022年)

 そして鷹の番号(ID147)


 H. KAMISHIRO → 鷹の持ち主の名前


 ヤマグチさんはつづけて言った。

「たいていの鷹は、“アンクレット”っていう足につける輪っかに、この番号が書かれているんだって」


 それを聞いて、私はびっくり! すぐに 鷹司くんにもらって手首につけていたブレスレットを見た。


 もしかして……これって、アンクレットだったのかも!?


 そこで、ハジメが言葉をはさんできた。


「でも、ナツキのブレスレットにある名前は”H. KAMISHIRO”だから、イニシャルがちがうんだよ。鷹司たかしなら、最初は”T”だろ?」


 うさぎさんが言う。

「鷹司くんのおじいさんの名前だったとか?」


 そのとき、ヤマグチさんが、パソコンのキーボードをたたきながら、

「その人って四十年前の大浦おおうらもり小学校の校長先生だったらしいわね。だったら、名前は、神城かみしろ丈一郎じょういちろうさんで、イニシャルは”J・KAMISHIRO”になるね」


 フユキはちょっと首をかしげちゃってる。するとヤマグチさんはニコっと笑って、


「じつはね、お役所からは、持ち主の名前は直接ちょくせつには教えてもらえなかったの。けど、その番号の鷹を探しているって伝えたら、鷹の持ち主から図書館にメールが届いたの」


「ええっ! メール!? なんて書いてあったの?」


 みんながパソコンをのぞきこむと、ヤマグチさんがディスプレイを指さして言った。


「8月の終わりの日曜日に“鳥屋敷”で待っています。神城かみしろ隼人はやと


「たぶん、この人が、ハジメくんのメモに書かれていた鷹の持ち主だと思うよ」 と、ヤマグチさん。


 隼人のイニシャルは”HAYATO”! ぜったいに、この人が”H・KAMISHIRO”だ!でも、メールにはそれ以上のことは書かれていなかった。


 うさぎさんが言った。

 「8月の終わりの日曜日って、今日だよ!」


「今から行こうよ!」って私。

「“鳥屋敷”に行けば、シロベルちゃんのこともわかるかもしれないね!」ってフユキ。

「そりゃ、行ってみるしかないだろ!」ってハジメ。


 神城かみしろ隼人はやとって、どんな人なんだろう?

 でも、その人に会えば、鷹司くんとシロベルちゃんのことが、きっとわかるはず!


「また調べてほしいことがあったら、いつでも図書館にいらっしゃい」


  そう言って、ヤマグチさんはパソコンに向かい、カタカタとキーボードをたたきはじめた。 そして、ニヤッと笑みを浮かべて私たちのほうに手をふってくれた。


――ハジメはクリスタルのふしぎな力のことは何も言ってないっていうけど……なんか気付かれてる?


「ありがとうございました!」

 

 ヤマグチさんにお礼を言って、私たちは図書館をとびだした!



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