第7話 持つべきもの

「玲央〜!一緒に帰ろ〜」

「こなつ!声が大きいよ...」

今日の玲央はなんだか素っ気ない気がする。

いつもなら飄々と受け流す会話も今日はなんだかちゃんと受け止めているというかなんというか とにかく様子がおかしい。

「ねぇ...なんかあったら言ってよ?私玲央の味方だから」

「こなつまで...僕そんなに悩んでるようにみえる?」

「悩んでるっていうより普段の様子と違いすぎる」

「そうなんだ。それより今週の『はんなり』観た?」

分かりやすく話逸らしたな

「まあ観たよ。っていうかあのアニメ展開早すぎ 焦るぐらいなら2クールやればいいのに」

「流石に新キャラ登場から5分で裏切り明かしてくるのは笑っちゃったよね〜」

いつもの会話。いつもの道。違うのは隣に歩く人の体だけ。


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「ただいまぁ」

返事は返ってこないがついついやってしまう 習慣とは怖いものだ。

これは自慢じゃないが僕の実家は太い。どれぐらい太いかというと高校の入学祝いと言って家をプレゼントしてくるぐらい太い。流石にあの時は少し引いたが感謝しているし自慢の親である。

学校のバックを置きソファに倒れ込む。充電を済ませたスマホを取り上げlimeをひらく

(燈色はもう帰っているだろうか)

そんなことを思いながら電光が発する文字をなぞっていく

「燈色今家?」

『家だぞ』

「んじゃ相談。」

『おう』

「なんかこなつの周りにいると胸がドキドキする」

「どうにかしろ」

『なんで俺がお前の惚気話に付き合わなきゃいけないんだ?』

『女子の方が喜んで相談受けてくれるだろなんで俺なんだ?』

「連続して疑問文を送ってくるな

このネットリテラシーがないやつめ」

『それはごめんて』

「よろしい」

『...これほんとに俺がやんなきゃダメ?』

「お前じゃなきゃ相談してない」

『ほんとそういうとこ直した方がいいぞ。特に今後は』

「どゆこと」

『まぁ気にしなくていいよ。それよりお前の悩みだが...』

「解決できるのか?」

『物事には必ず原因があるんだ。それを見つけられれば解決できるんじゃないか?』

「おお なんか頭良さそう」

『だろ?ということで今日何か変わったことは?』

「TSした」

『TSしたな』

「普通にこれしかなくね?確定じゃね?」

『それな もう解決か』

「待て。TSが原因だとしても女の子になった事とドキドキは関係あるのか?」

『確かに』

『でもそのドキドキは必ず恋愛感情から来てるはずなんだよなぁ』

『お前柏木さんのどこが好きなの?』

「何その質問 普通に答えたくないんだけど」

『じゃあお前は一生ドキドキの原因が分からないまま過ごしたいのか?』

「かっこいいところ」

『は?』

「かっこいいところ」

『...可愛いとかじゃなくて?』

「かっこいいところ」

『まじ?』

「てめぇそろそろ埋めるよ?」

『ごめんなさい』

『ピキーン(閃いた時の音)』

「それ打ってるとき虚しくならないの?」

『俺の推理では

玲央が柏木さんのかっこいい所をすきになる

でも男のときはかっこいいより可愛いを感じやすい

そして女の子になって守られる側でかっこよさをより感じるようになった。』

『これ完璧じゃね?L.I.P.召命完了じゃね?』

「勝手に殺すな」

「まぁでも確かにあってそうだわ。あざした」

『これぐらいラクショーよ』


やっぱり持つべきものは友である。

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