第5話 リョウ 静かな家にて
リョウくんとの別れから2年後、メアリ105B号は新しい家庭に配属されることなく、一時保管センターに保管されていた。
人間との別れの経験を持つメアリは、再配属プログラムにおいて“再調整中”とされていた。
だが、メンテナンス技師のアズマは、彼女を「壊れてはいない」と判断した。
「お前は、“誰かを忘れない”っていう記録を持ってるんだろ。それは、消すもんじゃない」
アズマは、自分の実家にメアリを引き取った。そこには寝たきりの祖母と、仕事で忙しい妹がいた。
最初、家族は戸惑っていたが、祖母はある日こう言った。
「この子は、機械じゃないよ。“思い出してくれる”存在だよ」
メアリは、再び日々の暮らしに戻った。新しい誰かの記憶を、また一つずつ、丁寧に記録していく。
夜、メアリは時々、バックアップメモリの中にあるリョウくんの手紙を読み返す。
“またね、メアリ!”
「またお会いできる日まで」
その記録は、今もやさしく灯り続けている。
⸻
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます