外界研フィールドノート
取手ポテト
第1話「外界への扉」
薄暗い研究室に、青白く光る魔導端末の画面が反射していた。タカミ・イオは眉間に皺を寄せながら、時空魔法の術式構文を見つめていた。
「……まだ安定しない」
彼女の周囲には、紙のメモ、簡易陣の刻まれた札、そして使い込まれた杖が並んでいる。そこへ、ゆったりとした足音が聞こえてくる。
「イオ、準備はできているか?」
現れたのは、外界研の指導教官・クゼだった。
「えっ、まさか……今日ですか?」
「外界に新たな変動があった。急ぐ必要がある。お前に行ってもらう」」
* * *
円卓の上に、浮遊投影された外界の地形図と、異常魔力領域の波形データが並ぶ。イオはクゼから説明を受けていた。
「今回の任務は、この座標に現れた“螺旋状構造物”の内部調査だ。魔力共鳴が高く、時空の歪みが検出されている」
「……中で何が起きてるか分からないってことですね」
「そうだ。支援は端末越しの連絡のみだ」
イオは小さく息を吸い、うなずいた。
* * *
夜の儀式場。巨大な魔法陣が淡く発光し、幾何学模様が浮かび上がっていく。イオは膝をつき、術式を記述する。
「時空・次元接続・ゲートの開放…術式よし、陣よし」
杖で床を叩くと、魔力が一気に流れ込む。
「発動!」
一瞬の閃光と共に、イオの姿は空間から消えた。
* * *
目を開けると、そこは赤紫に染まった空と、歪んだ木々の並ぶ森だった。空気が重い。
「これが……外界……」
背後では転送陣が静かに崩れていく。魔力の濃さが、肌を刺すようだった。
「魔力干渉……強すぎる。気を抜いたら意識が飛びそう」
そのとき、森の奥から異音が響いた。
「っ、誰か……何かいる?」
イオは杖を構えた。
(続く)
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