彼女の背に、温もりを求めて

@iimao

本編

朝、目を覚ますと、目の前には彼女の背中があった。

 まるで泣き疲れた子供のように眠っていて、その背中はいつもよりもずっと小さく、どこか幼く見えた。


 私は、それがなぜだろうと、まだ微睡みの中にある頭でぼんやり考える。

 そうしているうちに、昨日の出来事が、波のようにゆっくりとよみがえってくる。

 一瞬、身体が強ばった。


 でも――今目の前にある彼女の背中と、昨夜、確かに感じた体温が、それをやめさせた。


 彼女はうなされているようだった。寝顔も、寝相も、どこかいつもの彼女とは違っていて。

 その違いに、私はふと驚かされる。


 だけど、そんなの、きっと分かりきっていたことなのだ。


 彼女だって、自分の力が怖いと思うこともあるはずだから。

 そして、その原因になったのが自分だと気づいたとき、なんだか申し訳なくなって、私はそっと彼女の背中に抱きついた。


 彼女の身体がぴくりと揺れる。

 けれど、すぐにその様子は落ち着いていった。


 まるで、それだけで安心したみたいに。


 その反応が、どこか愛らしく思えて。

 私は思わず、小さく笑ってしまう。


 まだ寝足りなかった私も、そのまま、もう一度目を閉じた。

 もう震えないその体温を、胸いっぱいに感じながら――

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