第32話 地獄房再び
ひと悶着があったものの、アオの協力もあって邪神の魂を手に入れた俺は、ホロの待つ早速地獄房へと向かう事にした。
そうして、再び地獄房に戻ってきたのだが、俺の後ろにはアオの姿もあった。
「なぁ、本当についてくるのか?」
「えぇ、ジュジュさんがその魂をどうされるのかが気になります」
「言っておくがこのことはなるべく誰にも言うなよ、目立つのは避けたいからな」
「いえいえ、ですからジュジュさんはすでに学内でトレンドになっているんですよ、時すでに遅しです」
「そ、それでも俺は目立つわけにはいかない」
「どうしてですか?」
「俺一人ではどうにもならない、力と仲間が必要だ」
「仲間ならここに一人いますよ」
「そりゃ心強いが、お前は俺と友達になりたいんだろ?」
「友達は仲間同然じゃないですか」
「・・・・・・とにかく、今は地獄房に向かう」
「えぇお供しますよ、ジュジュさん」
そうして俺はホロの収容されている独房へと向かったのだが、その手前で番人たちがアオの事を引き留めてきた。
「ゴールドランク以外の侵入は禁じられています」
「えぇっ、どうしてですかっ!?」
アオは驚いた様子で俺に向かって助けを求めてきた。
「あぁ、そういえばそうだったな、悪いがアオそこで待っててくれ」
「そんなぁ、ここまで来てそれはないですよぉ」
「仕方ないだろ、そういう決まりなんだ」
「それはそうですけどぉ」
俺はアオの悲痛な叫びを聞きながら、独房へと向かうと、そこには相変わらず優雅にティーカップを傾けるホロの姿があった。
「ホロ、戻ったぞ」
「あらジュジュ様、随分とお早いお戻りですね、何か忘れものでもなさいましたか?」
「早く檻の傍まで来るんだ、お前の残された時間はわずかだぞ」
「え、なんですか突然」
「お前に力を授けると言っていただろう、早く来るんだ」
「は、はいっ」
ホロは立ち上がり、おぼつかない足取りでふらふらと檻の傍までやってきた。だが、その瞬間に足を躓いたホロは体制を崩した。
俺はすぐさま檻の隙間から手を伸ばしてホロの体を受け止めた。すると、ホロは恥ずかしそうに謝りながら俺の体をしっかりとつかんできた。
「ジュジュ様、申し訳ありません」
「気にするな・・・・・・それにしても本当にきれいな額をしているな」
「え、額ですか?」
「え、あ、あぁ、すまない変なことを言った」
「うふふ、そのようなことを言われたのは初めてです」
「そうか、見る目がないやつらばかりだな」
「本当ですね・・・・・・あぁ、私もジュジュ様のお姿が見れればよかったのに」
ホロはそう言って俺の体を支えにゆっくりと立ち上がった。
「ホロ、お前の目は賢者の一人にやられたんだってな。具体的には何があったんだ?」
「知りたいのですか?」
「嫌でなければ聞かせてほしい」
「そうですね、私の目には真実を見抜く力というものを宿していました、具体的には、嘘をついている人間が黒く淀んで見えるという力です。世間的に我々の一族は邪眼の一族と呼ばれていますがね」
「名前の割には随分と神聖な力だったんだな」
「そうかもしれませんね、でも、その力のせいで私は目を失ってしまったのです」
「どういう事だ?」
「私には友人がいました、その方はとても純粋で嘘の一つもつけないとても美しい心の持ち主でした。
ある日、その友人は賢者の一人であるサッサ・ロンドという者から、ギルドの勧誘を受けたと嬉しそうに私に伝えてきました。ですが、私はその話が信用できませんでした。」
「なぜだ」
「私の友人はブロンズクラス、お世辞にも賢者のギルドに勧誘されるほどとは思えなかったのです。
なので、私はひそかにサッサ・ロンドと友人のやり取りを盗み聞くことにしたのです」
「そしたら?」
「サッサ・ロンドは言葉巧みに友人を誑し込み、ギルドの所属のために試練を受けるように仕向けたのです。そうすればギルドの加入を認めると・・・・・・ですが、私の目に映るサッサロンドの姿は恐ろしいほどに真っ黒でした」
「つまり、奴の言葉は全て嘘だったという事か」
「はい、嫌な予感がした私は、すぐに友人にギルドの勧誘の事やサッサ・ロンドとの関係を絶つように勧めたのですが、友人は私の言葉を聞き入れてくれませんでした」
「それで、友人はどうなったんだ?」
「・・・・・・後日、サッサ・ロンドのギルドに所属する者達が、友人が試練に挑戦してその命を散らしたという事を耳にしました」
「そんなことが、本当にあったのか?」
「皮肉なことに、私の目に映るサッサ・ロンドのギルドメンバーたちは鮮明であり、その瞬間に私は絶望しました。
その後、私はサッサロンドの嘘を暴くために自らに宿る力を駆使して、彼女の悪事を暴こうとしたのですが、結果は御覧の通り・・・・・・」
「真実は闇に葬り去られたのか」
「たった一つの真実は、多数の正義には到底及ばないという事をその身に強く感じました、そして私は光を失ったのです」
「・・・・・・」
「現状、命が助かっただけでも友人よりも恵まれているのでしょうね」
ホロの頬には一筋の涙が流れており、俺の服を掴む手は強く握られながら震えていた。
「ならば、お前がやるべき事は俺からの力を受け止め、目先にある試練を乗り越えることだ」
「はい」
「その身を捧げる覚悟はできているか?」
「勿論です、ここから出られるのであれば」
「では、今からお前の体に強力な魂を融合させる、それによりお前の体には強烈な変化が起こることになる」
「魂の融合?」
「そうだ、俺が手に入れた魂はとても強力なものだ、自我を乗っ取られるか、失う可能性もある。だから、ホロは自我を保ちその魂を自らのものにするんだ」
「わ、わかりました」
「ホロ」
「はい、なんですか?」
「それから、好きな匂いはあるか?」
「匂いですか?それならこの部屋に充満していますわ」
「ん?」
「匂いませんか、この紅茶の香り、私紅茶が大好きなんです」
「そうか、なら安心だな」
この場所は最悪な場所に見えるが、彼女にとっては決して悪くない環境らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます