序章ー6:女の子は苦手だ

 次の日、僕はラポリから娘を紹介された。


 ラポリと同じ緑系統の色だが、娘は黄緑色の地竜ドレイクだった。


「やっほ~若様っ!!あたしはルビケットっていいます!!今日は若様の遊び相手を精一杯楽しもうとおもいま~すっ!!」


「こらルビィ!若に向かってはしたのうございますよっ。」


 ラポリに頭をコツンとされて、ルビィことルビケットは「いててぇ~!」と自分の頭を優しく撫でた。


「すいませんね~若。不肖の娘がご無礼な態度をとってしまって。」


「いやいいよ。元気な娘さん、ですね・・・。」


「手がかかって大変なんですよぉ~。若くらいにおとなしさもあればよかったのですがねぇ~。」


 ちょっとその方がよかったかもしれない。


 こういう元気で活発な女の子は、正直いって苦手だ。


 僕の前世での最後の務め先になった養鶏会社では、新卒に高校を卒業したての女の子が結構入ってきた。


 みんな僕と大違いできらきらしてるし、それで近寄りがたい。


 まだ28歳なはずだったのに、どうにも若い子のノリについてけないのだ。


 一回アニメの話を振ったのだが、みんな見てなかったのでちょっとスベったことがあった。


 僕もおじさんになったのか、それとも元が陰キャだから話に入りずらいのか・・・。


「わ~か~さ~まっ!」


「わっ・・・!?」


 ルビケットに尾を『かぷっ』と軽く噛まれてビックリした。


「今日はよろしくお願いしますねっ!」


「うっ、うん・・・。僕の、方こそ、よろしくお願いします・・・。ルビケット・・・さん?」


「気軽に『ルビィ』って呼んで下さいよぅ~♪若様なんですからっ!」


 いいのかな?


 前に職場の高卒の女の子を「~ちゃん。」って呼んだらセクハラ問題寸前までいったことがあるから・・・。


 あれ以来女の子は「画角の中だけで十分。」と思うようになってしまった。


 非モテな男の、自業自得な苦い思い出だ。


 だけど、ここは異世界で僕は地竜ドレイクの若君。


 あんまり怖がる必要は、ないのかもしれない・・・。


「・・・・・・るっ、ルビィ?」


 おそるおそる呼ぶと、ルビケットはにんまり笑って「はぁ~い♪」って答えてみせた。


「ちょっ、ちょっと呼んでみた、だけ・・・。」


「えへへ~♪そうですかぁ~。」


 なんだかほんの少し、心の中の不安がほぐれた。


 この子の愛嬌のおかげかもしれない。


 嫌われてないみたいでよかった。


「じゃあお母さん!行ってきます!ほらほら若っ!」


「ちょっ、ちょっと・・・。」


「日暮れまでには戻るのですよ~!」


「はぁ~い!!」


 ルビィに前足を顎でぐいぐいされて、僕は巣の入口である谷間を抜けて、初めてこの世界の外へと出たのだった。

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