第41話 初めてのちゅ〜
交番では住所と電話番号を聞かれた。
朝、6時半くらいだっただろうか…。
叔父さん家の電話は、眠そうにプルルル♪っと鳴ったに違いない。
多分、電話の会話は迎えに行くという内容だった。
私は東淀川警察署までパトカーに乗せられて向かった。
警察署で、コーヒー等をもらって叔父さんが来るのを待った。
警察官に優しくされていると、自分はそんなに悪いことをしているとは思わなくなってきた。
罪の意識も薄れてきた時だった。
叔父さんと、叔母さんが、少年課のドアを開けて入ってきた。
いきなり、
「なにやってんねん!!」
という言葉と同時に、パシっ!と、叔母さんの平手打ちが私の頬を打った。
私の隣にいた年輩の警察官が言った。
「君が憎くてやったんじゃないよ。愛のムチやで。」
暫くして、私は叔父さんの車に乗った。
車に乗ったら眠くなって寝てしまった。
起こされて目を覚ますと、そこには、
『大阪児童相談所』
と書かれていた。
この場所には見覚えがあった。
親父が亡くなって間もない頃に春徳伯父さんと来た記憶がある。
その時は、色んな心理テストみたいなのをやった気がする。
変わった子だから知能的に大丈夫なのか調べてたのかな?
重春叔父さんと典子叔母さんは、何やら職員と話していた。
その後、また、車に乗り、行き着いた先は
『一時保護所』
と書かれた建物だった。
職員が俺に言った。
「これからどうした方が優里君のためになるかを叔父さんたちと考えるので、その間ここでの生活になるけど頑張ってね。」
私は言われて考えた。
「何で俺のためを考えるのに大人の勝手な事情でこんな所に預けられるんだ」
そんな風に思い、考えたが、こうして今でも思い出せる経験のひとつになるとは、この時思いもしなかった。
今振り返ると、私はなんて自分勝手だったのだろう
一時保護所では、やることがなく、卓球、オセロ、将棋、読書をして過ごした。
小学生にしてはやけに将棋のできる、正人君や、卓球のうまい鉄兵君と仲良くなった。
小学生から中学生までがいて、遊ぶ時以外は女子、男子と、分かれていた。
ある日、卓球大会があった。
日々の血の流れるような遊び兼練習の中、私は
「ゆりちゃんサーブ」
を習得していた。
ただ単なるバックスピンサーブなんだけど…(笑)
決勝戦は、私と鉄兵君だった。
惜しくも私は負けてしまったが、女子の前でいいカッコできたから満足だった。
その数日後、正人君や、鉄兵君は、親に引き取られたか、施設が決まったのかで一時保護所を出所していった。
私は1週間がたち、一時保護所では、古い方になった。
みんな、新しい人が来ると
「なんで来たん?」
ってな感じで、家庭の事情で来る子より、何かやらかした子が多かったから、悪いことしたのを自慢したりしながら仲良くなっていく。
正人君は家出を繰り返していたそうだ。鉄兵君は万引きやら、窃盗らしい。
そうこうしているうちに新しい人が入ってきた。
茨木市の茨木西中の竜だと自慢していたから印象的だった。
シンナーをやって捕まったらしい。
竜は私と同じ学年だった。
茨木西中の竜君は俺と違ってオマセさんだった。
「いい女おらんよな。」
と私に言ってきた。
私は中3で1つ年上のまり子さんのことを
「いいなぁ。」
と言っていたから竜君は
「あぁ…あん中ではまだマシやなぁ。」
と言っていた。
ある夜の自由時間だった。
「おまえと、まり子くっつけたるわ。」
と竜君は私に言ってきた。
「ついでに電気消したるから押し入れにでも押し倒してヤッたれや。」
と言われ、私は顔を赤くした。
部屋にはまり子さんと仲のよかった友恵さんもいて、私とまり子さんが戸惑ってキスをしないでいると、
「俺と友恵ちゃんがするからお前らもやれや。」
と竜君は友恵さんとあっさりキスした。
いきなり唇を奪われた友恵ちゃんの方は戸惑っていたけど(笑)
すると、まり子さんは私に唇を重ねてきた。
ぷるんっと、柔らかい唇だった。
実はまり子さんは竜君が、友恵さんは、私のことをタイプだったみたいで、何とも切ない四角関係だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます