短歌集
夏樫
三月
形良き花の実のため今日もまた蜂はあちらへこちらへ運ぶ(花粉)
三円のビニール袋と紙ストロー タコ糸結わえてたこたこあがれ(たこ)
大空を八本足が優雅に泳ぐ 醤油をつけたらおいしいのかな(たこ)
登校前めくっていくのが私の仕事 今年は特別一枚多い(カレンダー)
大晦日掃除の途中で見つけたの三月のままの猫のカレンダー(カレンダー)
君の話はいつも長くて長久手の友好都市は南木曽らしい
真っ赤な手で緑のお耳をつけたなら南天二つこれで完成(赤色)
梅の花春告鳥が蜜を食む 君がつぶやく餅が食べたい(ウグイス)
ほきょっけけ ほけっけきょけきょけ ほけっけきょ ほほほほけっきょ ほけきょっきょ~(ウグイス)
滲んだ文字さで始まりらで終わるなぞる頃にはただ独り(さよなら)
始まりはたったひとつの小さなゆらぎ その偶然を奇跡と呼んだ(誕生)
眠たげなあなたの瞼に口付けを梔子ひとつ地面に落ちた(口)
見飽きるほどどこもかしこも山だらけ 無ければ案外淋しいものね(山)
爛漫に咲いた桜を散らす雨 花は筏に枝には青葉(雨)
少しずつ柵と鎖外れてく広げた翼で何処へ旅立つ(10代)
バーガー屋で調子に乗って追加したポテトが腹に入らず後悔(ポテト)
桜咲くまだぶかぶかの制服は三年後には着こなせるかな(新しい)
覚えてる?ポプラの木の下みんなで埋めた将来の夢はピアノの先生(箱)
部屋の隅ホコリ被った木のゴミ箱ズボラな僕には不要な代物(箱)
知ってるかいレンズの語源レンズ豆 カレーに入れたりするらしいね(レンズ)
レストランの豪華な食事もいいけれど貴方のお手製カレーも好きよ(おいしい)
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