2024年1月7日 ②

 料理屋を出て、目の前にあった占いのお店に入ることになった。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「二人です」

「では、まず、お名前と、生年月日をこの紙に記入してください」


 受付の人が紙を差し出した。武田さんは楽しそうに紙に氏名と生年月日を書いていた。

 ――六月五日

 初めて知った誕生日。だけど、過ぎていなくて、なんとなくほっとした。

 僕も自分の紙に生年月日と名前を書いた。そして二枚の紙を受け付けに渡した。


「ありがとうございます。二人で一緒にうけられますか?」

「そうしてください」

 武田さんが即答で答えた。

「占いの種類は何になさいますか?」

 受付が紙を見せてくれた。その紙には手相占い、算命学、タロット、相性占い、と書かれていた。


「人気なのはどれですか?」

「初めての方は大体、手相と算命学が多いですね」

「じゃあそれでお願いします」

「承知いたしました。では二番の先生でおねがいします」


 僕たちが二番の机の前に行くと、占い師を絵にかいたような格好の女性が対面に座っていた。


「こんにちは。どうぞお座りください」

 僕たちが腰を掛けると、対面の女性は僕たちを交互にみた。

「女性の方からいこうか。男性の方はちょっと待っててね。両手の手の平を見せて」

 そう言われて武田さんが手を差し出す。


「いい手をしてるねえ。でも、少し生命線が弱いねえ。あんた、病気で苦労して生きてこなかったかい?」

「ええ、なんでわかったんですか⁈」 


 武田さんは驚いていた。きっとまぐれだ、と僕は思った。


「生命線が人よりも弱いからねえ。この後も病気で苦労するかもしれないねえ。ちゃんと彼氏さんを頼りなさいよ」

 占い師でも僕が彼氏じゃないことは占えないんだな、と思いながら、こっちを見ている武田さんに僕は苦笑いを返した。


「でもそれ以外は本当にいい手をしているわよ。特に何も心配はないわ。ご先祖様の守りの線も出てるし、結婚線も婚期の時期にちゃんと出てるから安心しなさい」

「次に算命学だけど、あなたは人ができないことも簡単に出来てしまうような人のようだわ。勉強とかは、得意?」

「はい。それなりには」

「あらやぱっり」


 そんなこんなで武田さんの占いは終了した。病気で苦しむこと以外特に頭に残るものはなかった。

 僕の番になると、一気に雰囲気が変わった。なぜなら手相が何にも当たっていなかったからだ。その微妙な空気観のまま、算命学に移った。


「あなた、最近いいことあったでしょう」

 ぎくり。この冬休み、いいことは沢山あった。算命学に入ってすぐに当てられたので、少し驚いた。それが顔に出ていたかもしれない。占い師は自信をもったように言った。


「でも気を付けてね。一月の後半は苦労したり、不幸が起こるかもしれないわ」

「どうゆうですか?」

「人には苦労する時期が決まっているのよ。それがあなたの場合は1月の後半から、2月の上旬までなの」

「回避するにはどうしたらいいですか?」

「そうねえ、周りの人がヒントをたくさんくれるわ。だから、周りにたくさん相談することね」

「そうですか。わかりました」


 僕は手相が当たってなかったからか、なんとなく信じてなかった。しかし、頭の片隅に置いておこうと思った。

 その後も大したことは言われなかった。安心半分、やっぱり占いは信じるものではないと思うのが半分の不思議な気持ちになった。


「意外と面白かったね」

「そうだね。でもこれから不幸があるらしいよ。めっちゃ嫌なんだけど」

「大丈夫だよ。周りが助けてくれるって言ってたし、私が助けてあげるよ」


 武田さんの笑顔を見て、僕は安心した。これからも、彼女は隣にいてくれると思うと、どんな困難も乗り越えてられる気がした。

「そろそろ解散しようか」

 もう日が傾いてきていて、中華街も明かりがつき始めていた。


「そうだね。じゃあ関内駅まで一緒に行こうか」

「いいや、おばあちゃん家が横浜にあるから、横浜駅にお兄ちゃんが迎えに来ることになってるんだよね」

「そうなんだ。お兄さんいるんだね。知らなかった」

「うん。でもちょっと過保護なんだよね」

「大事にされてるんだよ」


 僕たちはそんなことを話しながら、中華街の入り口に着いた。

「神田君、今日は楽しかったよ。じゃあまた学校で」

 彼女が手を振って歩き出した。その背中を見ていると、僕はなんだか不安になった。

 ――このまま、離れていってしまうんじゃないか、そんな気がした。

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