第22話 登校

 翌日の朝。俺は奈保美と近くのコンビニで待ち合わせた。


「ごめん、遅くなって」


「大丈夫。早く来ただけだから」


「じゃあ、行こうか」


 俺たちは自転車に乗り、2人で登校する。駐輪場で自転車を止め、2人で校舎に入った。そのとき、奈保美が俺の手を握ってきた。


「みんなに見られるぞ」


「別にいいでしょ。公開しちゃおうよ」


「公開したいのか?」


「うん」


 俺たちはそのまま教室に入った。

 クラスメイトの視線を一斉に浴びる。そこに、騒がしいタイプの女子・中坂が近づいてきた。


「え? 2人そういう関係だったの?」


「そうよ。付き合いだしたの」


 奈保美が答えた。


「うわー、おめでとう!」


 女子たちが祝福してくれる。男子は苦い顔で見ている奴らばかりだ。

 そこに高田さんが入ってきた。


「あ、有佐。奈保美と萩原君、付き合いだしたって!」


「うん、知ってる」


「あ、そうなんだ……」


 高田さんの険しい表情に中坂は気圧されて去って行った。


 俺は自分の席に着いたが、奈保美はまだ付いてきている。


「今日もお昼一緒に食べるでしょ」


「うん」


「じゃあ、隣に座ろうよ」


「わかった」


 その日の休み時間も奈保美は毎回、俺のところに来て話す。そして昼休みも隣。帰りも一緒だ。


◇◇◇


 そういう日々がしばらく続いた。時には奈保美の家に行き、ハグをして過ごすようになった。


 ある金曜日の昼休み、美柑が言った。


「みっちー、明日の練習午前で終わるって!」


「ほう、そうか。じゃあ、午後は空いてるな」


 植田がすぐ答える。


「まあな。また、みんなでどこか行きたいな」


 相良が言った。なかなか無いチャンスだ。


「よし、久しぶりに全員で遊びに行くか」


「おう!」


 美柑が言う。他のメンバーは大きな反応はしていないが、賛成のようだ。俺は奈保美を見た。奈保美は頷いている。つまり、行くって事だな。


「有佐もいいよな?」


 植田が言う。


「私はもちろんオッケーよ。萩原君とも久しぶりに話したいし。ね?」


「う、うん……」


 奈保美と付き合いだして、最近、高田さんとはすっかり話さなくなっていた。


「お前ら、仲良くしておけよ。また変な噂流れてるぞ」


 植田が言う。


「なんだよ、変な噂って」


「萩原は最初から奈保美狙いだったが、有佐がちょっかい出してたって噂だ」


「なんだよ、それ。真逆だぞ」


「まあな。でも、今はお前も有佐もお互いを避けてるから真実っぽく見える」


「……高田さん、なんかごめん」


 俺は高田さんに言った。


「ううん、いいけど……」


「けど?」


「奈保美と高田さんって、呼び方の違いには結構傷ついてるかな……」


「そ、そっか」


「それは仕方ないでしょ、私が彼女なんだし」


 奈保美が高田さんに言う。


「そうだけど、私も萩原君と仲がいいつもりだったから。ね?」


「う、うん……」


「はぁ……」


 奈保美がため息をついた。


「有佐、どうしても名前で呼ばれたいの?」


「うん……」


「まあ、いいけど。美柑も美柑って呼ばれてるし。でも、政志とは呼ばないで。それは彼女の特権にさせて」


「わかった」


「おい、俺の意見は?」


「何か問題でも?」


 奈保美の鋭い視線に俺は反論できなかった。


「わかったよ。これからは有佐と呼ばせてもらう」


「うん、萩原君、よろしく」


 有佐は嬉しそうだった。俺に向かってこの笑顔を見せるのはいつ以来だろう。


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