第19話 3人
麦島奈保美と話す日が何日か続いたとき、俺はまた植田から誘いを受けた。
「今日は3人で遊びに行かないか」
「3人?」
「そうだ。俺とお前と奈保美だ」
「……珍しいメンツだな」
俺たちと高田さんなら行ったことがあるが、麦島さんというのは初めてだ。
「だな。でも、今ならこっちの方がいいだろ」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ、いいな」
放課後、俺と植田と麦島さんは自転車でイオンモールに来ていた。八代のイオンモールはそれほど見るべきところは多くない。いくつか店を見た後、俺たちはフードコートに来ていた。
飲み物を買って適当に座る。ここは座席は多いが店は少ない。席はかなり空いていた。
「……さて、ここなら邪魔者なしに話できそうだな」
植田が言う。
「何の話だ?」
「そりゃ、お前たちの話だろ」
俺と麦島さんか。
「別に何も無いぞ。単にまた話そうということになっただけだ」
「それにしても親密じゃないか? 休み時間は必ず話しているように見える」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
「それは私が話したいからよ」
麦島さんが言った。
「そんなに話したいのか?」
「そうよ」
「ふーん、それって萩原に好意があるってことなのか?」
植田が言う。俺は思わず言った。
「お前、麦島さんに何言ってるんだ」
麦島さんは優しさから俺に話しかけてくれるだけだ。
「だって、そうだろ。お前、有佐と同じ事になってるぞ。有佐はお前にずっと話しかけていた。でも、お前と付き合う気なんて無かったんだ。勘違いして傷ついたのはお前だぞ」
「……」
俺は反論できなかった。確かにそうだ。俺は勘違いしないように自分に言い聞かせているが、それは高田さんの時も同じだった。
「奈保美、もし萩原に好意が無いのならもうこれ以上親しくするのは遠慮してくれないか。萩原が傷つくのは見たくないんだ」
植田は言った。
麦島さんはそれを聞いて、しばらくして言った。
「私は有佐とは違うわ。萩原君に好意があるわよ」
「え?」
「もし萩原君が付き合いたいんなら付き合ってもいいって思ってる」
「マジか……」
俺は驚いた。
「そうよ。でも……」
「でも?」
「萩原君の好意が有佐にあることは分かってる。だから、萩原君は私と付き合いたいとは思ってないんじゃないかな」
「……そうか、失礼なことを言って済まなかった」
植田は麦島さんに頭を下げた。
「いいえ、植田君はやっぱり友達思いね。改めていい人だと思ったわ」
「ありがとう。でも、奈保美はそれでいいのか? 萩原と付き合わなくて」
「……もちろん、よくないわ。だから、この場を借りて言わせてもらう。萩原君、私と付き合わない?」
「え?」
「もちろん、あなたがまだ有佐を好きなことは分かってる。でも、私と付き合うことで有佐を吹っ切れるかもしれない。それに有佐だって、私に嫉妬して、あなたを意識させることが出来るかもよ」
「……でも、そんな気持ちで麦島さんと付き合うなんて」
「いいのよ、私は。あなたと一時的にでも付きあえれば。安心して。もし有佐が萩原君の好意を受け入れるようなことがあれば、その時には身を引くわ」
「そんな……」
「大丈夫。私にとって有佐は親友よ。有佐が幸せになるならそれは私の幸せだから」
「……」
そこで植田が言った。
「萩原、お前の気持ち次第だが、とりあえず麦島さんと付き合うというのも一つの手だぞ。それでお前の気持ちも踏ん切りが付くかもしれないだろ」
「そ、そうだな……」
俺は心を決めた。
「麦島さん、俺で良ければよろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
こうして、俺と麦島さんは付き合うことになった。
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