第5話地底湖の黒い貴婦人

樹海の商店から 今度は鉱物の取引をしている村から依頼があったとゾフィから相談があり聞いてみると 鉱物の取引をしている村で奇病が流行っているらしく助けて欲しいそう

病気という事であればとルイーズさんを伴って行く事にしたが


樹海付近は隣国マルラス王国の領土であり 人助けとは言えあまり他国の人間が干渉するのは良くないのではないかと思い マルラス王国の冒険者ギルドに一応依頼を出してもらったが受理してもらえず 王国も動いてくれなかったそうだ


「なにか あったら僕が後始末するから 助けてあげてくれないか?」

クロノス王に言われルイーズさんと奇病の発生した村に向かう

迎えの馬車に乗り村に近づくにつれ 昔嗅いだ事のある嫌な臭いが漂って来た

ダンジョンや戦場で漂っていた腐乱臭というか死臭だ

「これは」ルイーズさんも気付いたようだ

迎えに来た馬車の男の話によると 最初に山で採掘をしていた鉱山技師 次に彫金師 それから山裾の住人 農業をしている者へと広がり 今は殆どの村人が罹患しているらしい


症状は食欲が無くなり徐々に瘦せ細り 青い模様が全身に広がり衰弱して死ぬそうだ

そんな話を聞きながら村に入る 屋外に出てる者は誰もいない


一軒一軒回って様子を見ていく どの家も酷い有様だ

痩せ細った住人が床を並べて寝ている そして鼻をつく腐敗臭

回復魔法をかけてルイーズさんの用意していた薬を飲ませるが改善は見られない

ルイーズさんは何か考え込んでいる

最後の一軒 村外れの家に立ち寄ると この家では住人が普通に夕餉の準備をしていた 寝込んでる者もいない

不思議に思って竈にいる少女に尋ねる「どうして この家には病人がいないんだい?」

少女はビックリして俺とルイーズさんを交互に見て

「もしかして 樹海の英雄様ですか?」と聞いて来る

「いや そんな大層なものじゃないよ 病気の原因の調査を頼まれた者だよ この家では何か特別な薬草とか飲んでるのかい?」

「いえ そんなものは飲んでいません ただ黒い貴婦人様の泉の水を毎朝飲んでいるだけです」

「黒い貴婦人の水?」俺が聞くと

「はい お婆ちゃんのお母さんが昔 河原で綺麗な青い石を拾った事があって それ以来寝込んでしまい お婆ちゃんが山の神様にお参りに行く途中で足を滑らせて 落ちた所に湖があって そこに黒い貴婦人様がいらして この湖の水を飲めば治ると仰られて 水を飲ませたら治ったそうです それ以来 家では毎朝 お供えをして水を頂いて飲んでます」

それを聞いてルイーズさんが

「最初は鉱山技師 次に彫金師 そして山の麓の住人 黒い貴婦人 トワ様の残した文献通りなら 原因はアガド鉱石に違いないわ」

「何ですか?そのアガド鉱石って?」

「アガド鉱石 またの名を暗殺石と言って 近くにあるだけで人の健康を害するの どんな魔法も薬草も効かず死に至らしめ 唯一効くのが その鉱山の近くにある湖の水だけと書いてあったわ」

「その湖に連れて行ってくれないか?」少女に言うと

「いいですけど 村の人は誰も信じなかったですよ」少女が俯いて答える

「俺達は信じるよ」俺が言うと

「わかりました」そう言って 奥にいる母親に何か話して外套を着て出てきた


山に入ると腐乱臭は更に酷くなり 臭いだけで意識が飛びそうになる

鳥や生物の気配も無く あちこちに動物や魔獣の死体が見える

生命力の強い魔獣まで死んでるなんて 相当にヤバいモノらしい

案内されて湖に着くと それは山の中にある地底湖だった

地底湖の中央に黒いモヤみたいのが漂い 言われれば貴婦人のようにも見える

「貴女が黒い貴婦人ですか?」

俺が問いかけると 影は一瞬揺らいだ

「貴女は何者なんですか?」


「私が誰で何時から此処にいるのかは分らん ただアガド鉱石と対をなすものだ 以前は私はこの湖の上を漂う存在でしかなかった

自我を持ったのは 70年前ぐらいだろうか 瘦せ細った女の子が母親の病気を治して欲しいとやって来た それを見て憐憫の情と自我が生まれたのだと思う

それより大分 アガド鉱石の毒が広まっているな お前達も水を飲んでおくがいい」

言われて俺とルイーズさんは水を飲む 身体のダルさが抜けたように感じる

俺達は水筒に水を汲み 村に戻り村人達に水を飲ませていく

「多分 これで大丈夫なはずです」ルイーズさんが村人達を診ながら言う

俺は 生き残っている鉱山技師を背負い アガド鉱石の採掘現場と思われる場所に案内してもらい 坑道の入り口を土魔法で塞ぐ

これでこれ以上の被害は無いだろう

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