第23話

●22話から1週間後。

●スマホ画面に表示されている速報ニュースのタイトルのアップ。


インドネシア諸島でマグニチュード9.0の地震が発生

大津波により、インドネシア諸島の1/3が消失


街行く人々A「今日ウチの地区停電あるんだよね」


街行く人々B「あぁ、輪番? 今朝私の家にもお知らせ来てたなぁ」


街行く人々A「しょうがないけどさ、何もできないし不便~!」


●ニュースで流れる震災の様子をスマホやPC、テレビなど各デバイスで見ている各国の国民(リアル世界の中身の人間たち)。街のデジタルサイネージには輪番停電のお知らせが表示されている。


●一方、ネット空間。きらびやかな広告やサイトの情報が踊るオリュンポス主催のワールドに表示された大きなウィンドウで同じくニュースを見上げている多くのアバター(一般ユーザーたち)のカット。


【ニュースの視聴方法/世間の背景に関して】***************************

・各国の国民(リアル世界の生身の人間)は上記のニュースをスマートフォンやテレビなど各デバイスで見ていますが、電力供給はある一定の時間しか行われていないので(夜間は輪番停電)、全体的に情報が枯渇しています。


・未成年の子供たちは供給が不充分なためスマホ等デバイスを持たせてもらえません。子供たちは大人が持っているスマホに群がる感じで情報を得ます。ただし、子供は子供で、彼らならではのネットワークや非合法のデバイスなどを駆使して情報を得てもいます。


・その他、メタバースのアバターは美男美女で綺麗な服装をしていますが、生身の人間は若干不健康そうな雰囲気、少ない供給の中で服を揃えているため外見も少しみすぼらしいイメージです。

(見た目の格差を出してください)

・オリュンポスの国民は情報を得るスピードが早く、生身の国民は遅いので情報格差も発生しています。そのため、噂話によるデマも多いです。

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●上記の背景を踏まえつつ。


国民(ネット上)「1時間後に十二神からの発表があるらしいよ」


●伝書鳩の形を取っているチャットツールがアバターたちに告知を持ってくる。

●告知を受け取り、ざわめくアバターたち。


国民(生身)「戦争で人が減って災害で人が減って……そのうち地上には誰もいなくなるんじゃないか?」


国民(生身)「あと1時間で輪番停電だな」


国民(生身)「今のうちに今日のニュースをダウンロードしておこう」


●リアル世界の生身の国民には時間と余裕がないので、バタバタと準備をしています。


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●場面変わり、タカチホ第参ベース・ブリーフィングルーム(勉強部屋)

●教壇に北野隊長。座席にはパイロットとメカニック等スタッフが集結し、北野からアラタが宇宙に行くことを告げられていた。


馨「アラタが宇宙そらに……」


●想定外の発表に凍りついたように静かになるブリーフィングルーム。

●「マジかよ」と顔を見合わせるスタッフもいる。


浅沼「あ、あの……あまりにも急すぎませんか? 決定が」


北野「総裁選でタカ派の永作が首相になっただろ。そのあたりも影響しているようだ」


浅沼「……国民の総意でもあるのか」


整備クルー「俺、この前の選挙比例は民自党に入れちゃったよ……」


●整備班クルー、小声で嘆く。


古田「にしたって、人的補強無しっていうのは……」


石川「——戦って死ねってことですかね?」


●「納得いかない」という顔でチッと舌打ちをする木野本。

●長澤は睨むように北野を見ている。

●杉崎は視線を机に落として落ち込んだように頭を下げている。


北野「齋藤一尉のオクトも宇宙そらに上がるが、仲村、お前は地球に残ってこのまま班長を務めてくれ」


馨「わ、わかりました」


●馨は北野に返事をしてアラタを見る。

●アラタは鋭い眼差しで北野の話を聞いている。


北野「まぁ…なんだ。決定事項に四の五の言っても仕方ない。斎藤一尉の抜けた穴は全員で埋める」


●北野がタブレットを確認し、整備スタッフと電算チームに指示する。


北野「AIのリンク攻撃だが、斎藤一尉がいなくても運用できるように調整しておいてくれ」


北野「同じようにできなくてもいい。足りないものがあったら言ってくれ。俺がなんとかする」


電算チーム「「「はい!」」」


馨含む整備スタッフ「「「はい!」」」


●北野は次に学生たちに指示を出す。


北野「木野本は第2小隊、浅沼は第3小隊に入れる。さらに第2小隊は第1小隊に」


北野「第3小隊は第2小隊に名称を変更する。慣れてくれ」


学生6人「「「「「「はい」」」」」」


●最後に北野はアラタ(斎藤一尉)を見る。


北野「斎藤一尉、連日の戦闘でお疲れのところ悪いが……1週間後第8宇宙作戦隊に行ってもらう」


●睨むように北野を見るアラタのカット入る。


北野「身支度は適宜行ってくれ。人を使ってもいい」


アラタ「――はい」


北野「そして……だ!」


●北野が振り返ってホワイトボード向かい、ペンを取って達筆な字で文字を書いていく。


<第1次電波塔破壊作戦>


北野「斎藤一尉とオクトを欠いてはいるが、本作戦は実行される」


●ペンを置いてブリーフィングルームに集まった人々をぐるりと見回して告げる。


北野「すまんな。みんなの命を、俺にくれ」


●険しい顔の北野のカット入る。


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●場面変わり、チャットツールの告知から1時間後のオリュンポスのワールド。

●国民(アバター)たちが大きな広場に表示された掲示板モニターを見ている。


<天啓です>


<来たる2048年12月24日に

セカンドデュカリオン・楽園解放(ルビ:タイタノマキア)を開始します>


<そこで オリュンポスの国民限定で

解放された楽園にご招待キャンペーンを実施します>


<応募は簡単 オリュンポスの国民として登録するだけです>


<既に国民である皆様は

応募インスタンスにリクエストしてください>


<抽選で1000万名様を救済ロケット・アークにご招待インバイトします>


●救済ロケット・アーク(30基)がずらりと並んでいるカット入る。


<当選の発表はメッセージにてお知らせします>


<〆切は11月24日>


<家族やお友だちにも教えてあげてください>


<当選者の一家族4名までアークにJoin可能です>


<皆様 ふるってご応募ください>


●モニターに大きく表示されるオリュンポスのマークで終わる。


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