第26話 みのりさんの家に招かれる

「私の家にようこそ」


「お、おひゃましま・・・しゅ」


 男の家すら行ったことないのに、女の部屋に足を踏み入れる機会が訪れる。都合のいい夢を見ているのか、地獄に堕ちていく前のワンシーンになるのか、はたまたそれ以外なのか。現実離れしている状況に、体が宙に浮いている感覚をかすかに覚える。


 整理整頓のできない男は、部屋を散らかさないように気をつけよう。ゴミ屋敷を作りあげたら、みのりの心証を損ねる。


「達、裸のお付き合いをしてみようよ」


 どんどん前に進もうとする姿勢は、誰ともかかわらなかった者と真逆をいっている。よっぽど対人関係に恵まれたのかなと思える。


「ひゃ、ひゃ、ひゃだか・・・・・・」


 いきなり飛んできた爆弾に対して、ろれつが回らなくなってしまった。


「うん。裸のお付き合いをしたいんだけど。達は猪突猛進タイプだから、ブレーキを聞かせるのは無理だろうね」


「みのりひゃん。びょうひょうしひゃう・・・・・・」


「これまでの付き合いから、どうなるのかは想像はついているよ。私は上機嫌になれるから、どんどんやっていいよ」


「リミュチャーガしゃずれちゃう・・・・・」


 みのりはくすっと笑った。


「達はとことん面白いね。そばにいるだけで、幸せな気分になれるよ」


 変人、奇人扱いされていた男を、面白いという単語で表現する。いろいろな人と出会ってきたけど、類を見ないタイプといえる。


「みのりさん、変わった人間が大好きなんだね」


 みのりは首を縦に振った。


「標準的な人間は一ミリも受け付けないんだよね。個性がとっても強い、自分に正直、ぐいぐいとくる男性が大好きなんだ」


 個性がとっても強く、自分に正直、ぐいぐいとくる男性。100%といかないまでも、大部分は当たっている。


「私の好みについては、小学校時代からまったく同じなんだ。いくつになったとしても、変わることはないと思うよ」


「みのりさん・・・・・・」


 続きを話そうとする前に、「お風呂が沸きました」という自動音声が流れる。 


「達、お風呂が沸いたみたいだね。あんなこと、こんなことをやってみようね」


「ああ・・・・・・」


 みのりは更衣室ではない場所で、服を脱ぎ始める。突発的な行動に対して、頭の血の流れは一時的にストップした。

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