第43話 マイナスからのスタート(みのり編)
「みのりさん、よろしければ・・・・・・」
「距離感の隙間をかいくぐって、告白するなんてありえないよ」
最悪なタイミングで告白を仕掛けてくる男。他人を思いやる心は、一ミリも存在しないらしい。
「みのりさんは別れたいと思ったからこそ、三股をかけたんでしょう。他人を浮気したという画像まであるんだけど・・・・・・」
無神経なうえに三股をしたと断定するような口調に対して、冷たい笑みを浮かべる。脳の血管からは、プチ、プチという音が聞こえる。
「そんなことあるわけ・・・・・・」
わずか一人の暴挙によって、人生は奈落の底に崩れ落ちていく。危険人物の破壊力は∞レベルを凌駕している。
根も葉もないでっちあげによって、関係性は冷え込んでいる。0からではなく、マイナスからのリスタートを余儀なくされた。
男はあきらめきれないのか、すぐに引き下がらなかった。
「みのりさんのことがガチで好きなんです。おつきあいしていただけないでしょうか」
アイドルに一方的な好意を持ち、受け入れられなかったことを逆恨みする。告白をする男からは、極めて危険なオーラを感じる。
「無理です。他をあたってください」
「お願いします、お願いします、お願いします」
「お願いします」と下手に出ているものの、「俺のいうことを聞け」といわんばかりのニュアンスが含まれている。本人にはいわないものの、独身で生涯を終える可能性は高い。
二人のいるところに、本物の彼氏が出現する。男はまずいと思ったのか、二人のところから速足で立ち去った。
「達・・・・・・」
「みのりさん・・・・・・」
達の顔はピーマンさながらに青ざめ、唇は震えあがっている。一生を共にしたい人からのはっきりとした拒絶反応は、全くに相手にされないよりもはるかにきつい。
どんなことをいったとしても、マイナスの印象を与えるだけ。「トイレに行く」とだけ伝え、彼から距離を取った。
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