第23話 みのりの心の中

 みのりと二度も遊びに行く。現実にいるにもかかわらず、バーチャルの世界にいるように感じられた。


「無口君、お待たせ」


「みのりさんなの?」


「そうだよ。髪をくくってきたんだ」

 

「誰なのかわからなかった・・・・・・」


 みのりが髪を開放すると、いつもの彼女に戻った。

  

「みのりさんだ・・・・・・」

 

「無口君も髪の毛をおろすと、別人みたいに見えるんだけど・・・・・・」


 前髪をおろすことによって、顔を完全に遮断している。他人の瞳に映るのは、伸ばした髪の毛である。

  

「今日はどこに行こうか・・・・・・」


 変なことを話せば嫌われる、余計なことをすれば距離を取られる、他人と違うことをいえば学校中に噂される。他人とかかわりを避けていた男は、マイナス思考に支配されようとしていた。

 

「無口君、ありのままをさらけ出そう。太ももを触っていたときみたいに・・・・・・」

 

 みのりさんは素の部分を、プラスにとらえている。これまであってきた人たちとは、思考回路が180度違っている。


 二人で歩いていると、昔ながらのラーメン店の看板を見つける。


「無口君、この店に入ってみようよ」


 他人をシャットアウトしてきた男は、外食する機会を極端に減らしていた。最後に外で食べたのは、いつだったのか思い出せない。


「外食したことも、ほとんどなかったんだね」


「人気のあるところは、どうしても落ち着かなくて・・・・・・」


 みのりは前触れもなく、体を合わせてきた。唐突な行動に対して、頭は真っ白になった。

 

「み、みのりさん・・・・・・」

 

「心の中にあるものを、どうしても抑えきれなくて」


「心の中にあるもの・・・・・・」


 みのりは小さく瞬きをする。


「今は話せないけど、すぐに伝えるつもりでいるの。むずがゆさを感じるだろうけど、ちょっとだけ我慢してね」


「あ、ああ・・・・・・」


 みのりはどんなことを考えているのか。頭はそのことに完全に支配されていた。

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