第5話 まといの感性はわからない(莉愛編)
築城まといは友達も多く、いろいろな人から慕われている。
まといを狙っている男性はとっても多く、これまでに40人ほどが告白した。まといは「好きな人がいる」という理由で、誰からの告白も受け付けなかった。
「好きな人がいる」といったのは、社交辞令であると思っていた。「交際したくない」とはいえないので、適当な理由をつけていると考えていた。
現実は違っていた。まといには本気で好きな人が存在していた。そのこと自体は喜ばしいけど、まさか達とは思わなかった。
達は一人ぼっちでいることが多く、クラスの誰ともやり取りをしない。あまりに存在感がなさ過ぎて、透明人間といわれるほどに。
小学校、中学校時代の同級生によると、感性、思考回路などが明らかに違うらしい。思ったことを口にするため、トラブルになることもしばしば。クラスから浮いた男は、人間を極端に避けるようになった。視界すらをもシャットアウトするために、前髪で顔を覆っている。あの領域に到達するのに、どれくらいの困難があったのかは想像もできない。
アドバイスを送りたいところだけど、完全にのめりこんでいる。あの姿を見ていると、宗教の信者さながらである。
夕食のことを考えていると、ラインが送られてきた。
「莉愛、無口君と親密な人を探してほしいんだけど・・・・・・」
どんな方法を用いたとしても、距離を詰めようとするまとい。彼女の頭の中は、達のことで埋め尽くされている。
まといを突き動かしているものは、どんなものなのだろうか。それさえ理解できれば、攻略法を見つけられるのに。前髪を眼鏡で隠す男だけは、絶対にやめたほうがいい。さもなくば、とんでもない地獄を見ることになる。そうなってしまったら、永久的に取り返しがつかなくなる。
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