第2話 球技大会のジンクス②

私立青陵学園は幼・小・中・高・大まで一貫学校であり、スポーツに特化した所謂スポーツ進学校である。


中学校は1組から4組までの4クラスあり、生徒数は1クラス40人、生徒の9割はなにかしらの運動部に所属している。


一般の学校に比べると運動に自信のある生徒が多いのは明白で、それゆえに球技大会に燃える生徒が大半なのである。


夏の球技大会はバレーボールとサッカーの2種目と決まっており、1クラス10人編成で球技大会に挑む。


そして光莉たちはバレーボールを選んだのだ。


光莉はコートに入り、対戦相手である3年2組のメンバーに話しかける。


「サーブのジャンケンしよ」


光莉より横幅も高さも10センチ以上は大きい3年2組の生徒が光莉に反応する。


「っふ、光莉、大丈夫?運動部でもないのにコートに立ったら弾き飛ばされるんじゃないの?」


2組の生徒は学校で唯一の文化部である吹奏楽部所属のほのかがすでに“自分は絶対スポーツをやりません!“という態度でコート外にいる姿を見ながら言った。


しかもほのかが大きな応援うちわを持っている様子が可笑しいのかニヤニヤした笑みを浮かべている。


「大丈夫!大丈夫!私鬼ごっこで鍛えてるから!」


光莉はそんなこと気にする様子もなく2組の生徒に向かってにっこり笑いながらVサインする。


「はぁ、、、光莉、スポーツは小学生の子守相手のお遊びじゃないよ。この学校では少しは心得てないと本当に大怪我する場合もあるんだから。」


2組の別の生徒が光莉を本気で心配する目になる。


スポーツで有名な学校に運動部でない生徒がいればかなり目立つ。


特に3年生の光莉は3年生になるまで部活動無所属だったので生徒の中で認知度は高めだった。


光莉は隣接している小学校の校舎で小学生と放課後の鬼ごっこを楽しんでいる。


光莉の唯一継続している“スポーツ”とも言える。


「私は本気だよ!だって今度の球技大会でバレー部に勝つんだから!」


「・・・・・・・・・っはっはっは!!ごめんごめん、それはそれは、、、余計な心配だったね!頑張って!」


やや長めの沈黙の後、2組のメンバーは突拍子のない光莉の発言に大笑いした。


青陵学園のバレーボール部はもちろん強豪校であり、部活動に所属すらしていない光莉が勝つはずもないと思ったらしい。


2組の生徒は光莉の発言を適当に受け流しジャンケンをするよう促した。


光莉と2組のメンバーが話しているうちに他の1組のメンバーは運動前のアップに慣れているのか、軽い動的ストレッチをし終える。


「澪!相棒(光莉)が頼りになるようでよかったね!」

「うるさい」


2組のメンバーが半笑いで澪に話しかけるが、澪は慣れてるのか軽くあしらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る