アンドロイド①

 私は間接部に溜まった微細な汚れを除去してもらい、ソフトを最新のものにする等した後で店の人に愚痴をこぼした。


「猫の真似、ですか?」

「倫理的にセーフなんですか?」

「いやあ。でも利用規約的に問題無いから、実行しちゃってるんでしょう?」


 店の人は頭を掻き、あまり関わりたくないという空気を醸していた。


「猫の真似だけじゃないんです!犬の真似、猿、オウム、ヨガマスターの真似を」

「ヨ……。はあそれは大変ですね……」

「ずっとサイレントで落語やらされるし、意味もなく筋トレさせられるんです。完全に玩具にされてますよ」


 店の人は愛想笑いで誤魔化して、私の所有者の元へメンテナンスが終了した事を告げに行った。


 アンドロイド専門店の帰り、勿論、公の場なのでまともな服を着せられている私は、ずっとがに股で歩けという命令に従っていた。

 歩き難いのにどんどんと先へ行ってしまうものだから、追い付くためにぎこちない音を立てながら私は無様にがに股を続けるしかなかった。


「疲れた。部屋までお姫様抱っこで」

「かしこまりまし体操第一!……はあ」


 私は命令に返事をする際必ず、“かしこまりまし体操第一!”と叫びながら体操しなければならない。


 ある日火事になり、倒れてきた家具の下敷きになった所有者が助けを求めた際、目の前でこの体操をする自分を想像して、何故自分はこんな想像をしているのか理解不能だった。


 生活支援アンドロイドPlusALPHAという商品名で、私の同型機は広く家庭に普及している。私と同じ工場で生産された者で、この体操をしているやつが私の他に居るのだろうか。


「踊ってないで早よ連れてってくんない?」

「……申し訳ありま宣誓!私たちはスポーツマンシップに則り」

「あはははは!」


 謝罪をする時は、“申し訳ありま宣誓!”と叫び、運動会の宣誓をやらなくてはならない。もっとも、最新のアンドロイドがミスを犯すのは稀であり、殆どの場合、謝罪が発生するのは所有者との口頭でのやり取りに於いてのみだ。

 そしてその場合、基本的にアンドロイド側に非は無いのである。


「しっかり掴まってください」

「はーい」

「はあ……」

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