第9話

🔳八月二十四日

 また、“河童は水死体説”を見つけた。


 曰く、頭の皿はまげがほどけるとあんな感じになる、甲羅は背中の皮膚がはげてそう見える、腕が伸びるのは脱臼してるから。


 臭いのは死体だから当たり前、尻子玉は脱腸のこと、くちばしは腐ってくちびるがなくなるから、きゅうりが好きなのは、夏に溺死者が増えるから。


 祖父は確かに見たと云っていた。一体何を見たのだろうか。祖父が見たのも水死体だったのか?


 そんなことはないだろう。そんな物騒な話だったら、警察沙汰になるだろうし、そっちの方が記憶に残るのではないか。


 そう思いながら川に降りてみた。川の様子は特に変わらず、こんこんと流れていた。


 今日は食べ過ぎたか、腹痛がする。早く寝よう。


 頭の中の声は止まない。




🔳八月二十九日




 まだ早い。もう少しだ。





🔳八月三十日

 何だ!昨日の日記は、誰が書いたんだ!いや、私の字だが、まるで記憶にない。


 確かに昨日は晩酌をして、そのまま寝てしまった。そこは覚えている。日記は朝書こうと思ったんだ。


 また腹痛がする。少し横になろう。食べてもすぐ腹が減る。空腹になると胃が痛くなる。胃潰瘍なのか? いや、それならこんなに食欲はないのでは?


 また誰かの声で目が覚めた。何と云っているのかは聞き取れなかった。




🔳九月三日

 川に降りたら、秋らしい風が吹いていた。鈍い腹痛が続くが、食欲だけはある。食べていれば、痛みは無くなる。


『まだだ、今じゃない』

 水の中に手を入れたら、また頭の中の声がはっきりとそう云った。何が今じゃないんだ⁉︎ 何の期限なのか!


 温泉で馴染みの老人に痩せたか?と問われた。


 


🔳九月十一日




 後少しだ。






🔳九月十二日

 まただ! 私は書いた覚えがない! 私は二重人格なのか? 腹痛で日記を書けなかったが、昨夜は晩酌はしていない。精神科を受診するべきか。

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