第18話「徴税騎士団と決算の剣」
アスクル=エデンを包囲した反税連盟。
中でも最大の脅威とされたのが、かつて“帝国の徴税剣”と恐れられた――徴税騎士団オース=ペンデュラムだった。
彼らは軍隊ではない。
課税執行そのものを武術化した集団であり、納税命令を斬りつけることで、相手の資産や存在すら斬り分ける力を持つ。
騎士団長の名は、バルゴ・レンヴァルト。
彼はかつてクロウの指導教官であり、“法”と“剣”の両方で誰よりも厳格な人物だった。
「クロウ・アステリオ……滅税という反逆思想を抱え、この場に立ったことを悔いるがいい」
「悔いはない。ただ、抗う者に“生きる権利”を教えに来た」
***
徴税騎士団は、特殊な戦術で戦う。
一人一人が税法に沿った剣技を扱い、その斬撃には“納税通知”が宿る。
第一陣、
第二陣、
第三陣、
クロウたちは迎撃するが、圧倒的な制圧力に徐々に押し込まれていく。
だが、アスクル側にも切り札はあった。
ラグズが設計した“滅税武装”――**決算の
「この剣は、すべての課税記録に“最終的な否”を突きつける」
使用条件は一つ。“自身の全資産と命を担保にする”こと。
「……クロウ、まさか使うつもりじゃ」
「いや。俺ではない。使うのは――この国の税理士たちだ」
***
クロウは呼びかけた。
「――全てのアスクル税務官に告ぐ。君たちは今、課税に殺されそうになっている。
だが、税理士とは、本来“生かす者”のはずだ」
沈黙の中、税務官たちが一人、また一人と決算の剣を手に取る。
「我ら、滅税の旗のもとに誓う。
徴税剣に支配された世界を――剣ではなく記録で変える!」
その瞬間、決算の剣が輝き、各税務官の背に“滅税印”が浮かび上がる。
彼らは一斉に斬りかかる。
「――課税の不整合を指摘、決算! 帳尻、終了!」
この一撃により、徴税騎士団の剣技は次々と無効化されていく。
なぜなら、騎士団の斬撃が依存していたのは、未決算の記録――
すなわち、クロウたちが記録の整合性を突きつければ、彼らの力は“成立しなくなる”。
***
バルゴ・レンヴァルトが動く。
「さすがだ、クロウ。だが――私は“剣での決算”を許さぬ。
最終勘定は、私がこの手で行う」
彼が構えるのは、騎士団の象徴たる
斬られれば、存在そのものが“未申告資産”として処理され、世界から除外される。
「クロウ・アステリオ。お前の“存在価値”を――帳簿の外に追放する!」
その瞬間、空気が割れ、剣と剣が交差する。
――決戦が始まった。
***
クロウ vs バルゴの一騎討ちは、まさに記録と記録の殴り合いだった。
バルゴの剣は、クロウの過去の納税記録を引用し、精神の根幹に攻撃を仕掛けてくる。
「お前が養った孤児たち。彼らの納税義務を逃れさせた罪。
その“社会的負担”を今ここで支払え!」
だがクロウは言い返す。
「俺は逃れさせてなどいない。“未来に返せるように”、今を生かしただけだ!」
ラグズが叫ぶ。
「クロウ、今よ! “記録の最終承認”を出して!」
クロウは天に向かって叫ぶ。
【決算記録:全件承認】
【課税未申告項目:該当なし】
【対象資産:合法的無税処理】
バルゴは崩れ、膝をついた。
「……認める。お前は、俺を超えた」
「違う。“俺たち”が、お前の時代を終わらせたんだ」
***
アスクルの勝利が確定し、徴税騎士団は撤退。
その後、世界各国はアスクルの制度を参考に、独自の滅税政策を導入し始める。
しかし――
「終わりじゃない。反税連盟は七つ。それぞれが異なる武器を持っている。
そして次は、最も厄介な連中だ……」
ラグズが頷く。
「次は、“課税魔法”を軍事兵器化した国……ナンヤ=ルーガだね」
クロウは空を見上げた。そこには、遠く光る魔方陣の空中艦隊が映っていた。
「空からくるぞ。課税砲と魔封条……“徴税戦争”の最前線が始まる」
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