第14話 更に先へ
先陣を切った二人の間隙を縫って、白いモンスターたちが押し寄せる。
それに対して一番に反応したのは伊吹だった。
「逆鉢!」
サファイアの蒼い輝きから顕現する蒼い波が幾つもの刃となって飛沫を上げる。
蛇のようにうねり、のたうち、飲み込み、モンスターたちは粉々に粉砕されて蒼い波が真っ赤に染まる。
運良く逃れられたとしても、次に襲ってくるのは圧倒的な波の物量だ。
それに攫われしまえば脱出は叶わず、藻掻きながら溺れ死ぬ。
「どうどう? あたし結構やるっしょ?」
「とっても素敵。そのまま広範囲を濡らしてくれると助かる」
「濡らす?」
「そう。そのほうが都合がいい」
涼風が蒼い輝きを身に纏う。
それは明滅し、迸り、熱を帯びる。
「
目も眩む蒼い閃光が、雷鳴を伴って落ちる。
それはすでに気温によって凍結し掛かっていた濡れた大地に落ち、瞬間、その地に立つすべてのモンスターに稲妻が届く。蒼い風が届かぬ位置から、蒼い氷柱を躱し、蒼い波から逃れてもなお、その地に足を付けた瞬間に感電死する。
「わーお、今の見た? 濡れないようにしてて助かった」
「……あぁ」
雷が落ちた地点は焼け焦げ、満ちていた水は蒸発し、凍結も一時的にはね除けた。
多くのモンスターがその場に倒れ、再びの凍結によって固まっていく。
気がつけばモンスターの群れは大きくその数を減らし、その事実はどこかに紛れている個体に撤退の選択肢を選ばせた。
どこからか咆吼が轟く。
それを合図に群れは一目散にこの場から去って行った。
「あ、帰ってく。あたしたちの勝ち!? 勝ちだよね!」
「そうみたい。ボス個体は倒し損ねたけど」
「いいじゃんいいじゃん、そんなの! やったー! あたしたちの勝ち-! イエーイ! ざまーみろー!」
「こんなことで騒いでんじゃねぇよ。まだ事態はなにも解決してねぇだろうが」
「うわー。人が喜んでるところに水差すとか最悪。水戸石のくせに水の使い方がわかってないねぇ」
「名前は関係ねぇだろ!」
「まぁまぁ。才覚なのには同意するけど、まぁまぁ」
「テメェ」
「おっと、これからどうします? マスキー」
四人の視線が俺に集まった。
みんな俺の指示を待っている。
俺の決定次第で、この子たちの今後を、生存を、左右することになるだろう。
そう思うと決断に躊躇してしまう自分がいた。
わかっているつもりだったが、先の一戦だけでも俺は内心ひやひやしっぱなしだった。モンスターを仕留め損ねたら、反撃を受けたら、負傷したら、取り返しが付かないことになったら。
結果的に、そうはならず上手くいった。
みんな俺が思うよりもずっと実戦に適応していて驚いたくらいだ。
だが、それでも四人の命を背負う立場が、こんなに重圧のあるものだとは思わなかった。
俺もまだまだ考えが甘く、そして安請け合いをしてしまったと思う。
まぁ、事前にそれが完全にわかっていたとしても、涼風やほかの子たちがこの場に立つ限り、俺にほかの選択肢はありえなかったんだがな。
「怪我はない。調査の継続は可能。そうだな、みんな」
「はい」
全員が同じ返事をした。
なら、躊躇はいらない。
「このままこの寒冷化の調査を続行する。原因を突き止めるぞ」
この選択が誤りでないことを願う。
「とはいえ」
全員が意気込んだところだが。
「この寒さだ。輝力の管理には気を付けろ。戦いに生き残れても輝力切れで凍死なんて笑えないからな。みんな限界が来たらすぐに言うんだ。その時点で調査を打ち切って引き返す。同意は取らないぞ、決定事項だ。行こう」
蒼い稲妻が走った地面はすでに、寒冷化のせいで凍結積み。
足を滑らせないように注意を払いつつ、先へと進む。
進行方向先はわかっている。気温がより低いほうへと向かえばいい。
その先に、この寒冷化の原因はあるはずだ。
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