第17話 笑ってはいけない村

(場面:道なき道を歩くハルとシュン。背景には広がる草原。風が草を揺らし、どこまでも静か)


ハル

「……人、おらんな〜。誰や、旅しよう言うたんは?」


シュン(即ツッコミ)

「言い出したのはお前や!」


ハル

「いやあ……旅ってもっとこう、出会いや別れ、屋台飯に宿屋のおかみさんとの人情話とか……そういうのやろ?」


シュン

「幻想抱きすぎや。現実は草しか生えとらんわ」


ハル(足元の草を見つめながら)

「草生えるwww……って言う人もおらんのに……くっくっく」


シュン(顔をしかめて)

「あかん。ハルが壊れた」


ハル(立ち止まり、両手を広げて)

「もうアカン。ちょっと休憩や。笑いのガス欠や」


(場面転換:清らかな川が流れる河原。ふたり、腰を下ろす)


ハル(川を覗きこみながら)

「くっくっく……人がおらんと笑わせられへん。1日分の笑い、全然摂取できてへん……」


シュン(水をすくいながら)

「笑いはビタミンか」


(ふたり、顔を見合わせて小さく笑う)


――そのとき、川の向こうから、かすれた声が響く。


「たすけてー!!!」


ハル(目をこすりながら)

「あれ……? 川で、子どもが……溺れてる!?」


ハル(走り出しながら)

「くっくっく……“溺れる者は笑(藁)いをも掴む”っちゅうしな!」


シュン(全力で走りながら)

「言うてる場合か! 早よ助けんかい!!」


(ふたりで子どもを引き上げる。子どもはむせつつも無事)


子ども(咳き込みながら)

「ありがとう……お兄ちゃんたち……!」


シュン

「よかったなぁ。こんなとこで何してたんや?」


子ども

「えっと、遊んでたら足すべらせちゃって……でも助けてもらったから、ちゃんとお礼がしたいの!」


ハル(笑って)

「礼なんてええって。俺ら、たまたま通りすがっただけやし――」


子ども(真剣な目で)

「……お願い。うちの村に来て!」


(ハルとシュン、顔を見合わせる)


――場面転換:村の入り口。

石垣に囲まれた小さな村。人の気配はあるが、笑い声はどこにもない。


(村人たちは一様に無表情。子どもすら声を上げず、目だけがこちらを見ている)


村の長老(老人)(深いため息のあと、口を開く)

「……ふむ。よくぞ、我が村の子を助けてくれた。礼は尽くしたいところじゃ」


シュン

「そんなん、気にせんでも――」


長老(声を低くして)

「だが……一つだけ、言っておかねばならん」


ハル(眉をひそめて)

「ん? なんや?」


長老(静かに、厳かに)

「――この村では、笑いは禁止されておる」


(空気が、一瞬で凍りつく)


ハル・シュン(同時に)

「えええええ!?」


(子どもたちすら、声を出さずに視線をそらす。空気は重く、どこか悲しみに満ちていた)

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