第16話 旅立ち

(風に揺れる木々。村の広場の外れ。荷物をまとめるハルとシュン)


ハル

「よし。着替えよし、食料よし、ツッコミよし」


シュン

「俺は荷物か!」


ハル

「“お荷物”とは言うてへん」


シュン

「“お”をつけると意味変わるで!」


(そこへ、フライとモグが駆けてくる)


フライ

「……どこ行く気だよ、アンタら」


モグ

「まさか……まさかこの村から旅立とうってんじゃねぇでしょうな?」


ハル(笑いながら)

「この世界にはまだ、俺らの笑いを必要としてくれるやつがいる」


シュン

「だから行くんだよ」


(少し沈黙。フライとモグが目を伏せる)


フライ

「……他の街で漫才やりにいくのか?」


ハル

「ああ、“笑いのビーバーイーツ”や!」


シュン

「この世界、ビーバー知らんやろ?」


(フライ、黙り込み、うつむく)


(ハル、ぽんっとフライの頭に手を置く)


ハル

「この村の笑顔は、お前らがいれば大丈夫やろ?」


シュン

「フライ、モグ。お前らのネタ、ちゃんと届いとったで」


(フライとモグ、顔を見合わせ、ぐっと拳を握る)


モグ

「ま、オレたちに任せときなって! この村じゅう、毎晩どっかんどっかんよ!」


ハル

「フライが飛ぶ練習して落下する音やなければええけどな」


(フライ、むすっとする)


(ハルとシュン、背を向けて歩き出す)


ハル(振り返らずに手を振る)

「じゃあな、行ってくる」


(フライとモグ、しばし見送る)


フライ

「……あいつら、カッコつけてるくせに、めっちゃ心配してんだろうな」


モグ

「でもよ、あっしらのネタで、この村の誰かが笑ってくれたなら――。それが、一番嬉しいんでい」


(朝日が昇る。ふたつの影が、村の道をまっすぐ進んでいく)


ナレーション

――笑いは、旅する。

たったふたりの漫才師が背負うのは、世界の涙。

笑いで癒せるとは限らない。けれど、それでも届けたい。

「笑うことは、生きることだから」

新たな地へ、次のステージへ。

ハルとシュンの旅が、再び動き出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る