第7話 バッテリーが切れてしまった
「バッテリー警告……⁉ くそ、まだ健人の手がかりすらないのに、戻らなきゃいけないのか……?」
そもそも、戻ってバッテリー交換してどうなるというのだろう? 健人を探すため回り道をしている分があるとはいえ、一体どこまで進めるのだろう? バッテリーの続く範囲内で健人を見つけられるのだろうか。イヤな考えだけが頭を巡る。
「いや、戻らなくていい。先へ進んでくれ。新しいバッテリーを届ける。今のバッテリーを使い切るまで進んだら新しいバッテリーに交換するんだ」
東教授の戻らなくていいという言葉に俺はほっと胸を撫でおろす。
「分かりました。でも、一体どうやって?」
「実はこの新たに発生した迷宮の動画をネットに上げておいたのだが、それに反応した
本職の迷宮探索者が協力してくれたのか。それは良かった。だが、気になることが。
「動画、上げていたんですね……」
自分が映った動画が知らぬ間に世に出ているのは何ともイヤな気分だ。だがそれで誰かが協力してくれるようになるのなら、まあ良いのだろうか。今は健人を助けるのが最優先だ。良いに決まっている。俺の肖像権ぐらいどうということはない。
「因みに音声は入れていないし、頭部に取りつけたカメラの画像だから、君の姿は映っていないよ」
俺の考えを見透かしたかのように教授がフォローを入れた。そうなのか。冷静に考えてみれば全身パワードスーツなのだから、映っていたとしても誰だか分からないか。
「そうですか、ではこのフロアの探索を進めます」
「まだもつとは思うが、戦闘中にバッテリー切れだけは避けてくれ。無理はするな」
「はい」
帰り道のことを考慮した分バッテリーが残っているはずなのだから、まだ大丈夫だろう。探索を続けよう。
俺は扉を開け、次の部屋に移る。魔物はいなかった。思った通り北側には扉が無く、今来た扉を除いて南側と西側に二つの扉があった。地下三階は小さな部屋が扉で繋がっている構造なのだろうか。
俺はまた真っ直ぐ進み西側の扉を開ける。部屋の中にいたブラックパンサーが飛び掛かってくるのを撃ち落とす。さっきよりも楽に体が動いた。パワードスーツの戦闘制御システムが敵の行動パターンを学習し、そこから動きを最適化してくれるらしい。苦戦したブラックパンサーも二度目は難なく倒せるようになった。本当に凄いものだな、このパワードスーツ。とはいえ無敵というわけではなく、警告が出たように稼働時間に限界はあるわけだが。
「ここが西側の端みたいですね」
三つ目の扉を開け、そこにいたゴブリンどもを倒し、真っ直ぐ進む扉がなくなったことを確認して俺は言った。それと同時に、また警告音が鳴る。バッテリーが十パーセントを下回ったとのことだった。そろそろ動かず、待った方が良さそうだ。俺は体を壁に預ける。どっと疲れが押し寄せてきた。駄目だ。気を抜くと眠ってしまいそうになる。
「あっ、もしかしてアレかな⁉ サイボーグ? パワードスーツだっけ? わー、なんか大昔の特撮ヒーローみたいなのがいるよ! 『宇宙刑事?』……あー、やっぱりみんなああいうの、好きだよねっ!」
うとうとしかけたところへ、場違いに明るい女性の声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます