ゴールデンウィークに帰省した唐澤進(からさわ しん)は、通っていた中学校が閉校すると聞き、ふらっと出かける。そして自分もかつて所属していたブラスバンド部の部員たち、さらには同じ部の同学年生で今の部の顧問である藤田美紀(ふじた みき)と出遭い……4人しかいない中学校のブラスバンドに35歳のおじさんが参加することが決まる。
主人公は35歳の社会人なのですが、なによりも強く感じたのは「青春ものだな!」でした。舞台が部活だからではないのです。主人公がひとつの演奏を成すことを目指して真剣に部や部員と関わって、心を突き合わせて情を育んでいく――青春もの特有の気持ちよさを魅せてくれているからこそにです。
それを支える筆力がまたすばらしい。コミカルさをたっぷりと含んだ文章運びが実に軽妙で、キャラクターたちの賑やかな絡みと心情描写の深さとの間に得も言われぬメリハリが効かされている。もうお見事のひと言!
変化球かと思いきやどストレートな青春ストーリー、みなさまにお勧めいたしますよ!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)