【二つの前世の墓参り】
そこから別の場所。
前世の両親の墓参りをしているシルビア達は──。
「さすがにクレルモンの知り合いはいませんか……。」
星条旗が立てられた両親の墓。
その墓を花で飾り付けながらシャスタが呟いた。
「当然よ、100年は経つんだもの。でも、お陰でゆっくり話ができるわ。」
古ぼけた写真でしか知らないクレルモンの両親。
もう顔さえおぼろげだった。
そんな両親の墓前に座り、マクファーソン時代の生活を話して聞かせるシルビア。
「それでね、ハウエルになって──」
今の時代の生活も話し、報告を終えて別れを言う。
「じゃあね、お父さん、お母さん。毎年は来られないと思うけど、また報告に来るわね。」
どこかに転生しているであろうクレルモンの両親。
あえて彼らを探す事はしていない。
悲しいが、転生した彼らは赤の他人になるのだ。
クレルモンの両親とマクファーソンの両親。
彼らとの思い出を胸に、シルビアは永遠の時を生きて行く。
「そろそろマクファーソンの墓に行きましょう。3時まで間に合わなくなりますよ。」
頷いたシルビアの手を取って、二人はマクファーソンの墓地へと移動した。
「あっ、ちょっと待って!」
マクファーソンの墓前に人影があった。
その人物が立ち去るまで身を隠し、それから墓前へと向かう。
「随分と高齢の人でしたね。見覚え、あったりします?」
「んー、顔が見えなかったし、何十年も経つから分からないかも。」
その人物がエドワードだとは知る由もなく、シルビアはマクファーソンの両親に語りかけていた。
「今年でティーンも終わりよね。パパ達がどこに居るかは知らないけど、何年かしたら探すつもりよ。」
それは彼らが25歳になった時。
約束通り、二人を出会わせペアにする為だ。
「あ、そうだ。今年はティム達の子供がキンダーガーテンに入るのよ。翼も消せるようになったし、安心して送り出せるわ。」
近況も話し終え、知り合いに会えば困るからと立ち上がる。
「本当はもっとゆっくり話したかったんだけどね……。」
「仕方ないですよ。そのうちゆっくり話せる時が来ますから……。」
資産家で慈善家だったマクファーソンは顔が広かった。
だから知り合いも多く、さっきの老人のように未だに墓参りに来る人がいるのだ。
「じゃあ、また来年来るわね。」
名残惜しそうに墓石を撫で、二人は墓地を後にした。
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