第13話 退院日
気づけば今日は退院日
未だにLINEも帰ってきてない
こんな形で帰れないよ…
「おはよう、リナ迎えに来たよ」
久々にこの顔みた
だけど何故かイライラはしなかった
私満桜と出会ってから変わったなぁ
「お母さんっ」
「服まとめといてくれた?」
「うん」
「先生と話してきた、手術頑張ったね」
「う、ん」
満桜からその言葉言われたかった。
今何をしているんだろう
満桜はああ見えて一人で抱え込んで人にはその辛さを見せないところがある
もしそうなら、私は拒絶されてるんだ。たぶん
手続きを済ませてから先生と最後に話をした
「退院おめでとう柳田さん」
「今日までありがとうございました」
「もしかしたらまた再発する可能性は無いとは言いきれないんだ。だから体には気を使って生活して欲しい」
「分かりました」
「あと最後に、」
先生は意味深な顔していた
「向こうの病院ってね、入院してる人かその家族しか入れないんだけど、先生向こうの先生と仲良くて知り合いの柳田さんが今日来るかもしれないって伝えてある。特別に入れることになった。だから行くか行かないかは柳田さん次第だよ」
「えっ」
そんなことしてもらって、行かないわけない
「最後に会いに行ってみたら?」
「分かりました!ほんとにありがとうございます」
私はそう行って走り出していた
「ちょっとリナ!どこ行くの!」
お母さんはそう言った
「車で待ってて!すぐ戻るから最後に行かないといけない!」
もう私の足は止まらなかった
やっと会える。ただそれだけ、何も望まないから最後に満桜に会いたかった
外はまだ蒸し暑かった。
河川敷を無我夢中で走った
満桜と手を繋いで見たこの大空も
満桜と遊んだ日々も
全部私の宝物
忘れるわけない
警備員さんに呼び止められたけど名前を言ったら本当に通してくれた
先生、ありがとう
満桜の病室はすぐわかった
いつも私の病室からカーテン越しに見て目に焼き付いてた
507号室 酒井満桜
病室には着いたのに足がすくむ
拒絶されてたら。もう私の顔見たくなかったら。
そんな事ばかり思い浮かんで扉を開けれない。
「ま、満桜っ!」
私が扉越しにそう言った
部屋でなにか落ちる音がした
返事はなかった。だけどそこには絶対満桜がいる
「満桜いるんだよね?返事して?」
「ごめん入ってこないで」
満桜の声だっ
でもやっぱり拒絶されてる。
私なにか悪いことしたかな
すごく泣きそう。
「どうして?」
「リ、リナちゃんのこと嫌いだから」
そんな震えた声で言われても説得力がないよ
「ごめん!入るね」
私は深呼吸をしてから重たい扉を開けた
「リナちゃんっ」
そこは真っ昼間なのに光を遮断してて
あの明るい笑顔を見せてくれた満桜が、そこにはいなかった。
「ねぇ何してるの?なんで電気も付けずにっ」
「お願い帰ってよ!俺の前に現れないでよ!!」
なんでそんな事言うのよ
こんなに会いたかったのに
私だけなの?
だけど今の満桜の姿はやつれていて
腕にはたくさんの注射痕があった
「何があったのさ、、、」
「リナちゃんっ」
だけど何となく気づいた
満桜の隣には車椅子があった
車椅子がないと生活出来ないのかな?
「リナちゃん俺足、動かなくなっちゃったよ」
満桜は無理やり笑顔を作って泣きながらそう言った
私は思わず満桜を抱きしめた
可哀想とか同情はしない
きっと満桜はそれを望んでないから
「ずっと俺、怖かったんだ。
歩けない俺を見て見捨てられるのが、拒絶されるのがだから自分から閉じ込めてた。」
私はいつも私の事ばかり考えて
こんなことになってるなんて気づきもせずに
本当最低だ私
「LINEも返さなくてごめん、でも見てたよ毎日」
「満桜っ」
「退院おめでとうリナちゃん」
「満桜会いたかったよずっと満桜のことばっかり考えてっ足が動かないからなによ!そんなんで私から離れないでよっ」
「セミさんうるさいよっ」
「満桜のバカっ!!」
「俺もリナちゃんに会いたかったんだよ!訳分からないくらいリナちゃんに会いたかったこうやって抱き締めて欲しかった」
気づいたら大声で2人でムキになって言い合ってた
同じ気持ちだったんだね
「バカ満桜大好きだよっ」
「リナちゃんっ」
思わずそう言ってた
「リナちゃんっ俺諦めようとしてたのにっ」
「満桜は私の事どう思ってるの?」
「世界で1番大好きだよっ!!」
同じ思いを持ってたことがこんなにも嬉しいなんて今まで知らなかった。
満桜が好き
誰よりも何よりも満桜が好きなんだ
「満桜っ」
「だけどリナちゃんと付き合えない」
「な、どうして?」
「どうせ俺もうすぐ死ぬもん。未来がない人と付き合ってもリナちゃんのこと傷つけるだけだよ」
「そんなこと、、そんなことあんたが考えることじゃない!後先のことなんて今どうだっていい!私は満桜といろんな景色を見たいのっ約束したじゃんかプリクラとか行こうって針千本飲ますよ!」
「でもごめん、守れないや」
「はっなんで」
「体が健康な人には分からないよ俺の気持ちなんてだからもう今日で俺のこと忘れて元の生活戻ってよ」
「何よそれ、」
「ごめんね、好きなのはきっと勘違いなんだよ。病気のせいでお互い吊り橋効果みたいなやつ?
また元の生活に戻ったら俺の事なんて、、、」
「忘れるわけないでしょ満桜のいない生活なんて耐えれない」
「いつもの満桜はそんなこと言わないよっ」
「そうなのかな、だけどこれが俺の本性だよリナちゃんは俺の事何も分かってないよね」
「分かるように見せてよ!分からせないようにしてるのはいつも満桜じゃん!!」
「、、、そうだねごめんね」
私はうつむいたまま、拳をぎゅっと握りしめた。
満桜の声は、諦めの色が強すぎて、まるで自分の存在を否定しているみたいだった
「リナちゃん俺はリナちゃんの彼氏になりたいよだけどリナちゃんを守ることも幸せにしてあげることもできない、それでも俺のこと嫌いにならない?」
「なるわけない私が満桜を最後まで幸せにしてあげる私と満開の桜見るんでしょ?」
私は満桜の小指を握ってそう言った
「まだ覚えてたんだ」
「忘れるわけない」
「でも、こんなに可愛いリナちゃんには俺以外にもっといい人がいるよ」
「私は満桜以外いて欲しくない」
こんなに好きだと思える人も
ここまで正直に話し合える人も
今後満桜しか要らない
「やっぱりリナちゃんは俺のヒーローだね」
少し照れながらそう言った
可愛い満桜っ
「こんなに否定ばっかりしてたけど、やっぱり俺は俺の本心はリナちゃんといたい」
満桜は私の頬を触ってこう言った
「俺と、付き合ってくれますか?」
満桜は決意の目をしていた
私は頷きながら、言葉にならない想いが溢れてきて、泣き崩れた。
「喜んでっ」
満桜はリナにそっとキスをした
この恋にタイムリミットがあるのは分かってる
それまであと何ヶ月あるか分からない
だけど今が1番幸せだと感じる
好きな人に好きだと言えること
その好きな人が私を好きだと言ってくれること
私はそれだけでもう十分幸せだよ
そして4ヶ月後
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