甘い考え
美衣子とあかり。2人との楽しくも、色々考えさせられるデートをなんとか終えた俺だったが、試練はまだまだ終わらない。
できれば、そのままスルーしたかった問題が降りかかってくる。
「小坂君、今日の放課後いいかな?例の件、OKがもらえたよ!」
「ええ……マジかよ」
三好クンプロデュースの、今更感の強い藤城との話し合い。確かにアイツに聞きたいことはいくつかあるが、別に聞かないままでも構わない、というのが正直なところだ。
そもそも目的がズレてないか?三好クンは本来、俺と藤城が最低限の挨拶を交わす程度の和解を目指してたはずなのに、どうしてこうなった。
……いや、自分で言ってるな。挨拶だけは最低限、そこから元通りの関係に戻そうというのが三好クンにとっての最良の結果、ということか?
「お互いケンカ腰にならないこと、他の人は混ぜないで2人だけでってことだけど、問題はない?」
「アタシたちがただ聞いているだけでもダメなの?随分と向こうに有利な条件ね」
「当事者同士だけで話し合うのが一番だと思うけど?」
「あの時、三好君も見てたよね。悠也君と藤城さんだけじゃ、どう考えてもまたケンカになりそうじゃない?」
「今だからこそ、冷静に向き合えるんじゃないかな?」
美衣子とあかりが突っかかっていくが、三好クンはのらりくらりとかわしていく。いくら舞台を整えたからって、争わない理由にはならないぞ?その辺りがわかってないのかな。場合によっては、三好クンの顔に泥を塗るどころか、叩き潰すことになるのだが。
「……まあいい。引っ張り出せたら譲歩するって言ったのは俺の方だ。今回ばかりは乗ってやるさ」
「それでこそ小坂君だよ」
嬉しそうに顔を綻ばせる三好クンだが、そうそう思い通りにはさせるつもりはない。
「話し合いが決裂して事態が悪化したら、全責任を三好クンに押し付けるからな。それくらいは覚悟の上なんだろ?」
「え……ど、どうして?」
「そりゃあ余計なお節介だからだろ。放置で良かった問題を、己の自己満足のためにここまで掻き回してくれたんだ。まさか自分にリスクは無いとでも思ったか?」
「……」
ああ、やっぱりな。人の善意に期待し過ぎだろ。仲裁に入って、お互い仲直りしようねーとか言って問題解決するなら、世の中は平和だよ。最悪の状況を考えられないタイプなのかな?まあ俺もこれ以上藤城と争うつもりは無いが、三好クンのおめでたい頭を、一発叩いてわからせるくらいはしてもいいだろう。
「放課後が楽しみだなぁ、三好クン」
「お、穏便にね?お願いだよ?」
そう言って、藤城の元へ戻っていく三好クン。慌てて再度、ケンカしないようにって念押しするんだろうな。何て言うか、底の浅さを露呈してしまった感があるな……
「ねえ沙希。アナタ本当にあの男がいいの?こう言ってはアレだけど、彼、全くアナタに興味が無いみたいだけど」
「えっと、い、今は……なんだか迷惑そうだし……」
「ふーむ、三好クンから見れば、七海さんも俺の取り巻きのように思えるのかもな。会話のきっかけが掴めない以上、俺の問題を片付けてからの方がいいのかも」
「は、はい……私のことは、後回しでいいですから」
そうは言うものの、七海さんの表情は冴えない。まあ好意を持っている相手から、こうまで存在をスルーされては無理もないけど。俺の中でも三好クンへの評価が大暴落してる今は、変に口を挟むより、落ち着いて見直してもらった方がいいかもしれない。
「悠也君、あの……」
「大丈夫。藤城だって冷静になれば、きちんとした話し合いの出来る相手だ」
「けど心配だよ?前はあんなに悠也君を怒らせたのに」
「その件は向こうが非を認めて謝ってきたからな。俺も変に掘り返したりはしないさ」
あかりの心配も尤もだ。あれだけやり合った藤城が相手、間に入っている三好クンもあのザマだ。普通に考えたら、新たな火種になるとしか思えないだろう。
それでも、告白ゲーム騒ぎが治まった後の素直な謝罪、正仁の厳しい言葉に見せた姿。俺とのいがみ合いを続けても、なんら良い方向には向かないとわかっているだろう。
そして俺も、距離を置いて客観的に見ることによって、藤城が何故あんなに頑なだったのかが理解できたと思う。それが予想した通りなら、俺との争いはもう起きないが、アイツにとってはより厳しい状況に陥ることになるかもしれない。一先ず、三好クンの望んだ平穏な結果にはしてやるつもりだが、最後まで責任は取ってもらうぞ?
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