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 王太子改め、次期ウェストリン国王エドワードは、つい数刻前までの壮絶な戦いぶりを微塵も感じさせない、太陽のように明るい笑みを浮かべた。艶やかな黒髪に深い青い目を輝かせる、新国王という広告塔として申し分ない美丈夫で、その姿だけで国民の信頼を半分以上は勝ち取ったも同然だろう。バージルは気を取りなおし、表情をひきしめた。

「戴冠式はできるだけ早く行いましょう。正式な国王が不在のままでは、他国につけいる隙を与えてしまいます」

「そうそう。新しい国王陛下がお披露目されれば、国民も少しは安心するんじゃないかな。ほら、パレードとかやってさ。兄上の華々しい姿を見たら、みんな未来に希望を持てるよきっと」

 バージルの進言に、隣のマイヤーも賛同する。二人の考えに、エドワードも異論はないようだ。

「まあ警備が難しいだろうから、パレードはやめておこう。即位後すぐに凶弾に倒れた、なんて結末は笑えないだろう?」

 エドワードの軽口めいた指摘に、バージルは当然とばかり後を続けた。

「しばらくは警戒を怠らないほうがいいでしょう。兄上の即位後の体制については、計画通り準備を進めてますが、外敵は確実に存在します」

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