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 なにしろウェストリン王国の国政は、悪化の一途をたどっていた。歴代の王がコツコツと築き上げてきた国力は、一人の浅慮で自己顕示欲が強い国王により、坂道を転げ落ちるように弱体化していった。

 そんな中、バージルの兄であり、ウェストリン国の創始者と比較されるほど聡明な王太子エドワードは、この現状に強い危機感をおぼえ、父王に反旗をひるがえす決意を固めた。バージルはもとより、末の弟であるマイヤーも長兄に賛同し、数年に渡って密かに多くの協力者を集めてきた。

 やがて満を持して、王太子を筆頭に三兄弟はクーデターを起こし、父王をはじめ悪政に加担した有力貴族たちを徹底的に排除した。すべては計画どおりに実行され、結果として大勝利をおさめた。

(達成感はあるが、後味は良くないものだな)

 バージルは皮肉な気持ちで、打ち壊された玉座を見下ろす。クーデターに加担したことに一片の悔いもないが、戦いの痕跡が生々しく残る室内では、さすがに晴れやかな気持ちになれない。しかし、そんな室内にそぐわない明るい声が隣から響いた。

「今は勝利を祝おう、と言いたいところだが、これからのことを考えると、悠長に構えてる暇はなさそうだな」

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