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ぼんやり考え事をしてたら、ふと足先に違和感を感じた。どうやら先ほど転んだ際に、とがった瓦礫の欠片がサンダルの先から入りこみ、足の指を傷つけたらしい。サンダルからにじみ出た血が点々と石畳を汚していくが、すでに赤黒く染まった瓦礫の中ではちっとも目立たなかった。
(これで俺にも、赤い血が流れてるという証明になるな)
灰色の髪は、灰色の瞳とあいまって亡霊のようだと揶揄されてきた。それが嫌で、髪はいつもあごの線を超える前に切り落としてしまう。世界はこんなにも色であふれていて、カシュアの体の内側ですら赤色が存在するのに、なぜ外見はこうも色彩をそぎ落とされてしまったのだろう。
(せめて、フードがついたマントがあればよかったのに)
居心地悪い思いで木々が連なる塀を抜けると、ようやく視界の先にウェストリン宮殿が姿を現した。贅をつくした建物は、国力を示す象徴でもある。しかし優美な外観に反して、内部は想像以上に荒れ果てていた。
調度品はすべて叩き壊され、壁にも天井にも壮絶な戦いの爪痕が色濃く残されている。そして廊下と呼ばれたであろう通路の先には、金箔が施されたものものしい、巨大な扉がそびえ立っていた。その扉が開かれると、部屋の奥から静かな声が響いた。
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