第3章: 最初の試練

森を抜けると、切り立った崖に囲まれた谷が現れた。星の石の光は、谷の底にある洞窟を指していた。アレンたちは慎重に崖を下り、洞窟の入口に立った。冷たい風が吹き抜け、内部からは不気味な唸り声が響いた。


「こりゃ、ただの洞窟じゃねえな。」カイルが剣を握り、眉をひそめた。「アレン、確かか? その石、ほんとにここを指してる?」


アレンは石を見た。光は強く脈打ち、洞窟の奥を指していた。「うん、間違いない。ここに…何かある。」リナは少し震えながらも、笑顔を作った。「よし、行こう! 星の欠片、絶対手に入れるよ!」


洞窟の中は湿気と闇に満ちていた。カイルが持つ松明の光が、岩壁に奇妙な模様を映し出した。模様は星と人の姿を描き、まるで物語を語っているようだった。アレンは模様を指差し、「これ…星を継ぐ者の話かな?」と呟いた。カイルは鼻を鳴らし、「そんな暇あったら、周りを警戒しろ。」と一蹴した。


奥へ進むと、広い空間に出た。中央には石の台座があり、その上に青く輝く欠片が浮かんでいた。「あれだ! 星の欠片!」リナが叫んだ。だが、台座に近づいた瞬間、地面が揺れ、岩の隙間から巨大な影が現れた。それは、星の病に侵されたような、鱗に覆われた怪物だった。目は赤く輝き、口から黒い霧を吐き出した。


「下がれ!」カイルが剣を構え、怪物に飛びかかった。だが、怪物は尾を振り、カイルを岩壁に叩きつけた。「カイルさん!」アレンは叫び、枝を手に構えたが、足が震えて動かなかった。「僕…何もできない…。」


リナがアレンの手を握った。「アレン、怖いけど、逃げちゃダメ! カイルさんを助けよう!」彼女は石を拾い、怪物の目を狙って投げた。怪物が咆哮し、リナに襲いかかったその瞬間、アレンは叫び声を上げ、枝を振り下ろした。だが、枝は怪物の鱗に弾かれ、彼自身が吹き飛ばされた。


「くそっ、ガキども、離れてろ!」カイルが立ち上がり、剣を振り回した。だが、怪物の黒い霧が彼の動きを鈍らせた。アレンは地面に倒れ、星の石を握った。「お願い…力を貸して…!」石が熱く輝き、アレンの体に光が宿った。彼は無意識に立ち上がり、怪物に向かって走った。


「やめろ、アレン!」カイルの叫びも聞かず、アレンは怪物の尾に飛びついた。光が尾から怪物全体に広がり、怪物は悲鳴を上げ、崩れ落ちた。アレンは息を切らし、倒れた。星の欠片が台座から浮かび、彼の手元に収まった。


「アレン、すごいよ!」リナが駆け寄り、抱きついた。カイルは血を拭い、「…ったく、無茶しやがって。死ぬかと思ったぞ。」と呟いた。アレンは欠片を見ながら、「僕…できたんだ…。」と呟いたが、心はまだ震えていた。自分の臆病さが、仲間を危険に晒したのだ。


洞窟を出ると、夜空に新たな星が一つ、輝いていた。アレンは欠片を握り、母を思った。「母さん、僕、一歩進んだよ。」だが、カイルの鋭い目が、遠くの影を捉えた。「動くな。誰かいる。」

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