第20話
「君にはすべてわかっていたんだな。これまでのこと、本当に申し訳なかった。」
慎吾さんの言葉が静かに響いた瞬間、あおいちゃんととあかねさんも同じ思いなのか、深く頭を下げた。
慎吾さんはゆっくりと息を整えている。あおいちゃんととあかねさんも沈黙の中で、言葉を探しているようだった。その姿に、彼らの誠意が感じられる。
「我々が謝るべきこと、それを言葉にしようと思う」
慎吾さんが静かに、しかし決意を込めて口を開く。その言葉が落ちた瞬間、あおいちゃんが息を詰めるように声を発した。
「ボク、いえ、私、あおいは……」
戸惑うように言葉を探すその姿は、どこか頼りなく、ぎこちない。だが、最後まで言い切ることはなかった。
「いや、いいですよ。25階層探索するんですよね?終わった後にしましょう」
俺の言葉がそれを遮る。
少し間を置き、続ける。
「今は、あおいくんも、ボクのままでいいですから……」
あおいちゃんは一瞬、目を見開いたが、その後ほっと息を吐き、微かにうなずいた。
その瞬間、慎吾さんとあかねさんも静かに息をつき、緊張が少し解けるのがわかった。
三人は互いに視線を交わし、無言の中で何かを確かめ合う。
「では、仲直りの印に、皆さんとは改めて初めての握手をしましょう」
華怜さんが柔らかい笑みを浮かべながら、穏やかに声を掛けた。
場に漂っていた緊張が、その言葉とともに少しほどける
慎吾さんは、静かだが確かな感謝の言葉を口にする。あおいちゃんとあかねさんも、目を伏せながらもその言葉に深く頷いた。その仕草には、ようやく言葉にできた思いが滲んでいるように感じた。
あかねさんは、迷いの晴れたような瞳でこちらを見据え、一瞬の静寂のあと、はっきりとした声で言葉を紡いだ。
「では、探索終了後に、私たちが話す時間をいただけますか?」
腕を組み、指先を軽くトントンと叩き、沈黙が場に漂った。
「はい、しかし、すべてを終えた後での謝罪は——」
そこで、わざと一拍置き、軽く息をつく。俺の表情は冷たい。
「遅すぎやしませんか?」
声の調子を少し落とし、そして、最後に視線を華怜さんへ向け、薄く笑みを浮かべる。
「ねぇ、華怜さん?」
「カナタさんが、すべて終わった後に話せとおっしゃったんです。いじわるですねぇ。さすがは、カナタ・ド・グラン・オーシャン・ル・フルール・シャルマン公爵閣下」
華怜さんは俺の皮肉をしっかり理解していて、あえて軽快な調子で返す。その声には、ほんの少しの茶目っ気が滲んでいた。
「ええ、俺は、なんてたって悪役貴族ですからね。」
俺が肩をすくめながら軽く笑うと、場の空気が一気に緩んだ。
一瞬の沈黙のあと、慎吾さんが吹き出し、あかねさんは小さく笑いを漏らす。
あおいちゃんも堪えきれず、くすくすと笑い始めた。
そして、華怜さんは「まったく!」と愉快そうに息をつきながら、楽しげに微笑んだ。
やがて、堰を切ったように全員が声を出して笑った。緊張に覆われていた空気が、ようやく完全に解けた瞬間だった。
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