第4話 記念すべき被害者第一号
私は妖精――名前はメルルと名乗った――と契約して、魔法少女になった後。すぐにでも、小夜ちゃんを探しに向かった――という訳にはいかなかった。
どう私が契約したのを知ったのか、まるで予めから分かっていたかのように私の家に、国内の魔法少女のほとんどが所属する組織『管理委員会』の職員がやって来た。
そして、そのままの流れで両親と一緒に小難しい話を聞いて、分厚い書類の束を渡されたりした後に、『管理委員会』に所属することになった。
色々と制約を受けることになってしまったが、私は正式に魔法少女になることができた。小夜ちゃんを救う為の力を手に入れたのだ。
おまけに、小夜ちゃんが関わっているだろう案件には積極的に派遣してもらう特別措置までしてもらった。
至れり尽くせりである。
と言っても、私のように因縁のある魔女の案件に、優先的に派遣される魔法少女はあまり珍しくはないらしい。その目的が復讐に類するものでなければ、という前提はあるが。
「ねえ、朱里。魔法少女としての名前は決まったの?」
「うん。決まってるよ、メルル。結構時間がかかっちゃったよ」
――魔法少女になって、まだ片手で数える程度ではあるが他の魔法少女と合同で魔女の『保護』の任務にあたり、無事に解決した日の夜。
自宅の自分の部屋にて、勉強机に座り学校の課題と格闘中にメルルが話しかけてくる。
――妖精は基本的に契約者の傍にいるらしいので、突然メルルに声をかけられても私が驚くことはない。もう慣れたものだ。すっかりと彼女の存在は、私の新しい日常になった。小夜ちゃんに次ぐ、友人と言っても過言ではない。
メルルの振ってきた話題に答える為に、シャーペンを動かしていた右手を止める。
――魔法少女や魔女には、二つ名が与えられる。それが自称か他称の違いはあるが、近年増加傾向にある彼女達を個人ごとに区別する為に必要なことである。
例えば、小夜ちゃんの魔女名は『刃』の魔女。刀剣の類いを創造する魔法が由来らしい。
そして、そんな小夜ちゃんを悪魔から救い出すことを絶対目標とした私の魔法少女名は――。
「――『マジカルライト』。それが私の魔法少女としての名前」
「うんうん。実に朱里らしい良い名前だよ! じゃあ、その名前に恥ずかしくないように、頑張っていこう!」
「うん。危ない時は助けてよ?」
「もちろんだよ。朱里――じゃなくて、マジカルライトと私は運命共同体だからね!」
■
「今日という今日は捕まえて、更生させてあげるっ!」
「ふんっ! やれるものなら、やってみなさい!」
――既に私ことマジカルライトと、『刃』の魔女になってしまった小夜ちゃんとの戦闘は三度目だった。
一度目は感情的になって突撃してしまい、戦闘経験の少なさも合わさり敗北の結果に終わった。
二度目は一度目よりも善戦はしたが、それ以上の成果は得ることはできず、小夜ちゃんは「私にもう関わらないで」と言うばかり。碌に対話に応じてくれなかった。
そして三度目となる今回は、今までの戦闘と違っていた。自分で言うのもなんだが、魔法少女として実力がまだまだ発展途上とはいえ、他の任務や先輩から指導も受けられて順調に伸びている
独学でしか力の扱い方を練習できない
「――『マジカルフラッシュ』!」
「――『ソードレイン』!」
――私の魔法が、
だけど、後少しもすれば最寄りの『管理委員会』の支部から、応援の魔法少女達がやって来る。このまま留まっていれば、私の勝ちは揺るがない。
それを分かっているので、僅かに余力を残していた
けれど、言葉だけでも伝えないと。
「お願い、小夜ちゃん! もうこれ以上、手を汚すのは止めて! 悪魔に操られて……脅されているなら、
「……貴女は」
これまでの戦闘では、ほとんど対話に応じてくれなかったのに。私の言葉で悪魔の洗脳が解けかかる取っかかりを得たのか、
ようやく小夜ちゃんを救えるかもしれない。それが思い違いであることを、数秒後に思い知らされた。他ならぬ彼女自身によって。
「――いい加減に鬱陶しいのよ、朱里。何度も言ってるよね、私にはもう関わらないでって。私が何の為に魔女になったのか、その理由も知らないくせに」
「小夜ちゃん……」
「もう友達ごっこなんか、おしまいにしましょう?」
「……ねえ、小夜ちゃん。嘘だって言ってよ!?」
「――さようなら。勘違いの魔法少女さん」
私の叫びが聞こえていないかのように、
■
その後は、応援でやって来た先輩の魔法少女達に現場の修復作業や被害状況の確認を任せて、私は『管理委員会』の支部にて今回の件について報告。
それが終わり次第、私はしっかりと休息をとるように言われて家に帰らされた。
怪我こそは回復魔法の魔法少女に治してもらったが、疲労までは誤魔化せない。少しでも早く家に帰りたかったので、普段とは全く別の近道となるルートを選択する。
(……今は何も考えたくない)
すっかり日が落ちた暗闇の中で狭い路地裏を歩いていると、とある違和感に気づく。
(……あれ? こんな時間帯に女の子?)
道の端っこには、小学校低学年か中学年ぐらいの少女が地面に蹲っていた。泣いているのだろうか。何かを押し殺しているような声が、微かに少女から聞こえてくる。
どんな事情があったとしても、この少女を無視する選択肢は私にはない。とりあえず事情を尋ねるべく、少女に近づき肩に手を置いた。
「大丈夫? 何かあったの? お姉さんで良ければ、相談に乗るよ?」
「うう……困っていることがあるんです。お人形さんがなくなったの。
「
――その言葉は目の前の少女ではなく、まるで自分に言い聞かせるようなものにも感じられてしまう。
と言っても、この少女はそんな私の汚い思いは知らないだろうが。
私の言葉に、顔を覆っていた両手を退けて少女は満面の笑みを浮かべてお礼の言葉を告げてくる。
「――お姉さん。
「――え?」
少女の言葉の意味が理解できる前に、私の全身から力が抜けて意識は闇に落ちてしまった。
■
「ふう……何とか最初の難関はクリアしたよ。
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