悪役令嬢に転生したのでヒロイン落としてもいいですよね?まずは最強の幼馴染みの助けを借りて攻略キャラを蹴落とすことから始めましょうか
第25話 推しの魔法を身体で体感して喜んでいたら幼馴染みを怒らせてしまいました
第25話 推しの魔法を身体で体感して喜んでいたら幼馴染みを怒らせてしまいました
痛い、身体が熱い。
死ぬ時ですら一瞬で、前世を含めてこんな激痛に襲われたことは一度もなかった。
例えるなら何だろうか、ガスバーナーで炙られてるみたいな、いや、そんな一点的なものではない。
背中全体に焼きごてを押し付けられたみたいなものか。
どちらも経験したことはないけど。
本当に痛くて、最初はそんなことを考えている暇もなかったのにどんどんと身体の痛みは落ち着いてきて、最後には優しい光に包まれたように微睡み始める。
その光はまるで私の中の痛みと戦うように何度かチカチカと明滅して、そこで、意識を手放すように覚醒した。
「ん……」
「ハイネ!!」
目を開けば一番に視界に入ったのはユーリだった。
起きたら画面いっぱいの推しとか死んだんか自分。
「ハイネ、目が覚めたか!」
「目が覚めてよかった……」
「心配かけるよね、もー、ま、君なら大丈夫だと思ってたけど」
「……知らせてくる」
それに続くようにセリム、アベル、アニと続き、散々からかっていたシグナですらその無表情に少しだけ安堵した様子を浮かべてそれだけ言うと早足に部屋を出ていった。
「あれ、私……どうなって……」
「私を庇って、背中に熱せられた校舎の破片を浴びたの……」
今いち現状を掴めない私に泣き出しそうな顔でユーリが説明してくれたことで思い出した。
絶対に起きないと思っていたイベント。
そうだ、スターダストインパクト事件が何故か突然起きて、私はユーリを庇ってそのまま気を失ったんだ。
スターダストインパクト事件とは簡単に言えば隕石を降らす魔法で学園が強襲されるというイベントだ。
ただそれだけのそれは学舎を半壊させ、死者すら出すほどの被害を被るストーリーの中でも一番悲惨な事件だ。
これもそれなりに後半に起きるイベントで、でも前回の件でイベントが前倒しされる可能性があることは知っている。
それでも起きるはずがないと断言出来たのには勿論理由がある。
「っ……そうだ! ユーリ! 怪我はない!?」
頭が冴えてきた私は慌てて身を乗り出してユーリに確認する。
身を乗り出した瞬間少しだけ背中に痛みと突っ張った感じがした気がするけどそんなこと気にしていられない。
「ハイネが、庇ってくれたから私は大丈夫だけど……でもハイネは……」
「っ……」
だけどハイネは途切れ途切れに答えながら、途中からボロボロと泣き出してしまって、私の顔からは血の気が引いていく。
推しを、泣かせてしまったなんて。
天国から一気に地獄に叩き落とされたような気分だ。
「ユーリ嬢がすぐに治癒魔法をかけたみたいで怪我は殆ど塞がってるらしいけど、傷跡は残るって」
皆が言い出しにくそうに口ごもるなかアニが口火を切る。
ああ、だから途中から痛みよりも優しい感覚が勝ったのか。
ユーリの得意魔法は回復魔法であり、そのお陰でこの程度で済んでいるのならばありがたい限りだ。
むしろ推しの魔法のお世話になれるとかワンチャン得した気分。
「本当に……ごめんなさいっ……私のせいで……」
だけどユーリはアニの言葉を聞いてさらに泣き出してしまうから私は慌ててフォローしようと口を開く。
「そんな! 私はいいけどユーリに怪我がなかったなら本当にそれはよかった――」
「よくねーよっ……!!!」
だけどそれはセリムの怒号でかき消された。
「せ、りむ……?」
私はその勢いに押されて、消えぎみな声で名前を呼ぶ。
ここまで怒りを露にしているセリムを私は見たことがない。
あのユーリ誘拐イベントの時でさえセリムはもっと冷静だったのに。
「良いわけがねーだろ! お前は公爵令嬢で、女の子なんだ、別にユーリを優先するなとは言わねぇけど、傷跡残るのによかったなんて言って笑うなよ!! もっと、自分を大切にしてくれよ……そうしないと、オレはっ……」
名前を呼ばれても尚抑えが聞かない様子で私に向かって怒鳴り散らすセリム。
そして、最後には言葉は消えて、その眉間に深く刻んだシワを隠すように両手で顔を覆ってしまう。
「セリム……でも、だってこれはっ……」
本来ならあなたがやったことでしょう、なんて言葉をこの場で発言できるほどには私はバカじゃなかった。
そう、史実ではこのスターダストインパクト事件を引き起こしたのはセリムなのだ。
私との一件で牢に入れられたセリムは牢を出てすぐに荒くれ者の集団を作って強奪や殺人を繰り返しておりこれもその中の一つ。
それがゲーム内の設定で、だからこそこのイベントは絶対に起きないと思い込んでいた。
何故ならセリムは荒くれ者にもなっていないしこうして、私の隣にいるのだから。
それでも起きたこの事件、おそらくユーリ誘拐の件ともどこかで繋がってはいるだろうけど、セリムが関わっていないのは明白。
それなのにゲームの中のことを思い出してしまって、何も言うことが出来ない。
「そこまでにしようか二人とも、ここは病院だよ」
誰も何も言えないなか、部屋に入ってきたその人が私達を窘めるようにいつもの口調でそう口にする。
「ララ……お姉さま……」
私はララのほうを見て、少しだけ泣きそうになって、慌てて目尻を拭う。
幼馴染みと喧嘩みたいなことをして、身内が視界に入ったから泣きますなんて、精神年齢大人の私からすれば恥ずかしいことこの上ない。
「セリムも、守れなかったからって当たってはダメだよ」
「っ……」
ララの言葉にセリムがぐっと息を飲む音が聞こえた。
「とりあえずみんな落ち着いて、少し話をしようか」
それからララは立ち上がっていたセリムを椅子に座るように促して、自身も手近な椅子に腰かけてから口を開いた。
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