第13話 変な噂を流されているようですね、気にしませんけど
「ユーリ、お昼ごはん食べに行きましょ」
学園生活に慣れてきた頃。
その日もいつも通りにユーリを、昼ご飯に誘う。
「あ、うん!」
「……セリム、起きなさい、行くわよ」
すぐに席から立ち上がったユーリとは逆隣に座っている、というか沈んでいるセリムに呼び掛けながら肩を強く揺する。
「ん、ああ、もうんな時間なんすね」
そうすればセリムはバッと顔をあげたけど顔には机の後がついていてだらしない。
「ユーリ、たまには二人で食べにいかないか?」
「それは許可しかねる、私はお嬢様を守らないといけない」
「おいそこ、勝手に抜け駆けしないでいただける?」
私が寝坊助と戦っている最中にも抜け駆けしようとする二人に私も参戦する。
そもそも私はユーリしか誘ってないのだけれど。
セリムに関しては置いていくと騎士を置いてくなんてと後で怒られるから連れてくけど。
「まだ教室にいたかハイネ・リューデスハイム」
「……いかがされたんですか先生」
そんなやり取りをしているなかふと、担任の先生に声をかけられる。
瞬間このイベントが何なのか把握して、この状態のハイネでも起きることに内心驚く。
「少し話がある、来なさい」
「これから昼食なんですけど」
「ああ、他の者は行っていいぞ、ハイネもすぐに済む話だ」
話に割って入ってきたセリム含む全員に向けて先生はそう言うけれど
「私待ってるわ」
先生の放っている空気を察してかユーリがそう言い出す。
「ユーリ、大丈夫よ、先に行ってて頂戴」
普段だったら大手を振って歓迎するそんな提案を私は笑顔で断った。
「……」
「それじゃあまた後で」
少しだけ驚いた様子を見せたユーリににこっと笑むと私は先生の後をついて歩きだした。
そう、これは、告発イベントだ。
「急に呼び出して悪いな」
先生に案内されたのは職員室ではなく空き教室でだった。
「いえ、いったいどうされたんですか?」
「……ある生徒達の間でお前がユーリ・ローレライを虐げているという話が上がって、それが本当なのか確かめたくてな」
「……」
私が聞き返せば帰ったきた言葉にやっぱりと溜飲が溜まる。
そう、これはハイネ告発イベント。
ゲーム内で特定の選択肢を選んでモブキャラの好感度をユーリがあげておくことで発生するイベントだ。
ハイネに虐げられていることを不憫に思ったモブ生徒が告発することでこうして槍玉にあげられるイベント。
そして本来ならこの場にユーリもいて、ユーリの選択によってはハイネとユーリの間がさらに拗れる。
だからこそユーリには来ないで貰ったのだ。
はっきら言ってユーリに嫌われたら軽く死ねる。
「で、実際のところどうなんだ?」
「先生は私がユーリさんを虐げているように見えますか?」
問いかけてくる先生に逆に質問で返してみる。
ゲームではハイネは爵位を笠に着てこのイベントをのりこなすけど、先生の表情からしてもそれは必要ないように思う。
「いや、実際のところそうは見えないし、むしろ……」
「逆ですよね? ユーリさんとは学園に入学する前からの友人ですし、むしろ誰よりも一番、仲良くさせていただいていると自負しております」
困ったように唸る先生の返事に被せるように私は進言する。
誰よりも、一番というところをしっかりと強調することは忘れない。
「まぁ、そうだよな、どっちにしろあの場所では話せんことだったのでね、呼び出して悪かったな、もう行って良いぞ」
先生はそんな私を見てすぐに解放してくれる。
そう、私はユーリへの気持ちを隠していないから周りから見ても私がユーリにメロメロなのは周知の事実のはずなのだ。
「……それでは失礼します」
私はお辞儀をすると早々に部屋を出てユーリの待つ学食に向かう。
誰かが意図して私を貶める為に広めた噂なのは確定事項だったけど、まぁそこまで気にすることでもないと早々に忘れてしまうことにして。
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