第13話
数学教師・松戸からゲーム機を取り返し、進路指導室を出ると、校舎の窓の外はすっかり日が暮れていた。
「いやいや二人とも、お疲れーッ!! 二人にはホント、感謝しかないよ。お陰で帰ったらゲームの続きが遊べるぜ!! いえーい!!」
彩名芽衣は満面の笑みを浮かべて、まるで宝物のように『Witch2』を抱えている。
「それは何よりです。ところで彩名さん、何か一つ大事なことを忘れてはいませんか?」
花屋のその一言で、芽衣の足がピタリと止まる。
「……ちッ。やっぱり覚えてやがったか」
「当然です。今回の勝負、僕に実入りはありませんでしたからね。それくらいの楽しみがあっても罰は当たらないでしょう?」
「花屋君のエッチ。サイテー。まさか君がそんな奴だとは思わなかった。見損なったよ」
わたしは思わず花屋に罵詈雑言をぶつける。
「何とでも言ってください。誰が何と言おうと、勝負は勝負です。賭けの代償は必ず支払って戴きます」
「…………」
わたしがジト目で睨んでやっても、花屋はどこ吹く風である。
「それに可愛い女の子のパンツに興味があるのは高校生男子として健全である証拠です。代わりに吉高さんが見せてくれるというのなら、僕としてはそれでも構いませんが?」
「……いや、それはちょっと遠慮しとく」
「……あー、もう、わかったよ。『Witch2』を取り返してくれた礼もある。ただその、恥ずかしいっていうか、ウチにも心の準備ってものがあるからさ。花屋、ちょっとだけあっち向いててくんない?」
芽衣が顔を赤らめて向こうを指差す。
「わかりました。それが乙女心というものなのであれば」
――花屋が窓の外を眺めてから数分後。
「もういいよ」
花屋が振り返るとそこには、純白の小さな布を指に引っ掛けた彩名芽衣が悪戯っぽい笑みを浮かべて立っていた。
「……彩名さん、そ、それは!?」
「ぎゃははははッ!! 確かに勝負に負けたらパンツを見せるとは言ったけど、履いている状態で見せるとは一言も言ってねーから!! 残念でしたーッ!!」
「…………」
花屋は無言のまま、石になったように硬直している。
「……あれ? おーい、どした? 履いてる状態のパンツが見れなかったのがそんなに残念だったか? いや、そんなにあからさまにガッカリされると、何かちょっと悪いことしちゃったような気もしてきたなァ」
「……いいえ、その逆です。彩名さん、その、ありがとう御座います」
花屋はそれだけ言うと、盛大に鼻血を噴き出して卒倒した。
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