第30話 ライガの修行

 ライガはクルーズの弟子となった最初の日。


「お前は俺の弟子として受け入れているが他の連中にお前がオズワルドの人間、それも王族の魔法騎士だとバレたら殺すからな」

「オズワルドの人間だと知りながら弟子にしたお前も批判の的になりそうだがな」

「問題ないに決まってんだろ。お前がオズワルドの人間だと知らずに弟子に取った事にすれば俺様に批判は来ないだろうぜ」

(まぁ、最強の大帝に逆らう奴なんていないだろうからな)


 そんな話をしてから、


「俺様の弟子と活動する以上はこんな場所に住む訳にはいかないだろう。お前も中央エリアに住んでもらう。引越しの準備をしろ」

「へ〜い」

「引越しが終わったらそのままセントラルセンターにある訓練場で修行だ」

「望むところだ」


 こうして2人は中央エリアへの引越しを終えると早速セントラルセンターにある訓練場に移動する。移動中に大帝国の兵隊と遭遇したが誰もライガの事を気にする様子はなかった。


「意外と気づかないもんなんだな」

「テメェが無駄に強いから相対した奴は死んだるからだろ。俺様以外はな」

「うぜぇ」

「そのうぜぇ奴に頼らないといけない自分を恨むんだな」

「クソが」


 そうして2人は訓練場に入る。そこには既に何人もの兵士がいた。兵士たちはクルーズが入るのを確認すると、


「お疲れ様です!!」


 元気よく挨拶する。


「お〜す。今日もしっかりと励んで強くなってオズワルドの兵隊を殺していこうぜ〜」

「「「「おー!!」」」」


 隣にオズワルドの人間であるライガがいるにも関わらずオズワルドの人間を殺す発言をして指揮を高めるクルーズに、


(性格悪いなこいつ。マジで強くなったら速攻で殺そう。2回負けたからその分苦しめようかとも思ったがやめだ。速攻で殺そう)


 と考えるライガに、


(このアゥエーの環境でどこまでこいつがやれるか。見ものだな)


 ニヤニヤするクルーズ。そんなクルーズとの修行が始まる。


「修行を始めるがお前は既に強い。そんなお前ではあるが魔法による強化なしでの身体強化をしていく。つまりはひたすら筋トレだ」

「まぁ、そうだよな」

「何だ自分でも気づいていたのか。足りない点は」

「当たり前だ。だからわざわざ大帝国に来たんだよ」

「その判断は正しい。そしてお前は幸運だ。大帝国最強であるこの俺様に鍛えて貰えるんだからな。お前を俺様の次くらいには強くしてやる。さぁ、始めようか」


 そうして始まった修行はシンプルな基礎トレーニングであった。ストレッチ、ランニング、腕立て、腹筋、背筋、そして素振りだ。そんな基礎的なトレーニングをえげつない数やらされた。


「おえ〜」

「おいおい、汚ねぇな」

「はぁはぁ、テメェ、、知ってたが本当にバケモンだな。こんなトレーニングやれるのテメェぐらいだろうが」

「まぁな。だが少なくともこれぐらいは余裕で出来ないと俺様には届かないぞ」

「絶対にテメェに追いついてやる」

「そのいきだ。さて、最後は俺様と手合わせだ」

「このコンディションでかよ」

「当たり前だろ。万全のコンディションで毎回戦えると思うなよ。不調でも戦えるようにしておけ」


 そう言って襲いかかるクルーズを迎撃する。


「クッソ!」

「ほらほら。魔法が使えないとこんなもんなのか!」

「舐めんなよ!」


 魔力が少ないための節約戦闘を考えているライガは剣術をある程度こなしている。当然大帝国の兵隊たちに比べれば練度は低い。だから、


「弱いな。素振りの時に思ったが粗が目立つな。明日はそこの矯正がメインだな」

「気づいた時に指摘しろよ」

「いや、弱さを実感させてからやった方がいいだろ」

「剣の腕はテメェの方が上なんだから指摘されたら大人しく言う事を聞くに決まってんだろうが。それに敵とはいえ今はお前が師匠だからな」

「お〜敵に師匠と呼ばせるのは最高に気持ちいいな。これからはテメェじゃなくてずっと師匠呼びな」

「調子に乗りやがって」

「テメェが俺様より下でいる内はお前はここで修行する以上は師匠呼び継続だ」

「クソが」

「それじゃあ今日は終わりだ。俺様は大帝としての仕事があるからな」


 そうして今日の修行が終わり休息を取るのであった。


「伸び代は充分ある。問題は魔人共が動くのがわからないという点だ。人間を舐めているならどっしり構えているだろうから。じっくり修行して強くしてやれるんだがな」


 クルーズはライガの伸び代に期待している。しかし、魔人の動きがわからないのを問題としていた。


「まぁ、考えた所で無駄だな。どうせ始まっちまえば流れを掴んちまえば良いんだからな」

 

 なんて言って余裕そうに笑うクルーズ。そんな余裕を見せていたクルーズであったがまさか一週間であんな事になるとは夢にも思っていないのであった。

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