第4章 重なる偶然とアクシデント
第9話 気づいてしまった視線
金曜の朝。改札を抜けて階段を降りるとき、小林はふと後ろの視線に気づく。振り向くと、田中がすっと目をそらした。
(…最近、よく見かける気がする)
気のせいかもしれないけど、数歩後ろにいることが増えた田中。先日のSuicaエラーの件以来、なんとなく空気が和らいでいた。
その日、偶然同じ車両に乗ってしまい、同じ駅で降りる。エスカレーター前で並んだ瞬間、田中が話しかけた。
「…朝、あのベンチの猫、最近見ませんよね?」
不意に出た一言に、小林は少し笑ってうなずいた。「あの白いの?私も探してました」
小さな会話。まだ“関係”とは言えない。でも、確実に何かが動き始めていた。
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第10話 返信、遅すぎ問題
放課後の駅前、中村はスマホを手に、既読のつかないLINEを見ていた。相手は山口。
先日、傘を届けたあとの会話の延長で、連絡先を交換していた。ほんの軽いやりとりだったが、山口の返信が2日以上止まっている。
(既読すらつかないって…やっぱり変だったかな)
ホームでばったり山口に会い、「あ…」と声が重なる。気まずそうに笑う山口。
「ごめん、仕事が詰まってて…って言い訳だよね」
中村は「いや、別に気にしてないっす」と笑い返すが、表情は少し硬い。友情未満、信頼未満。なにかが始まりかけて、すぐ止まる空気。
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第11話 朝のホームで足を踏んだのは
月曜の朝。混雑したホームで、佐藤は誰かに足を踏まれた。
「ちょっと、痛いですよ…!」
顔を上げるとそこにいたのは、田中だった。思わず声を強めてしまった佐藤に、田中はやや険しい顔で「すいません」とだけ返す。
その空気を遠巻きに見ていたのが斉藤駅員。心の中で、「これは、しばらく険悪になるな」と思う。
田中は階段を降りながら、自分の靴の先を見つめる。
(謝ったけど…あの人、前からちょっと気になってたんだよな。苦手って意味で)
少しずつ積もるストレス。次にまた何かが起これば、今度は言い合いになるかもしれない。
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第12話予告:エレベーターで二人きり(田中と小林)
予定の次回では、田中と小林がビルのエレベーターで偶然二人きりになり、微妙な空気のなかで何気ない会話をすることで、関係性が一歩進みます。ただしその一方で、中村と山口の関係にはまたズレが生じ、佐藤と田中の間では小さな口論が起こる兆しも…。
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