第8話 禁術と父の決意

 夢時は、ロジッスアに促され、大量の本が並ぶ部屋に入った。

 ロジッスアは椅子に座り、待っている。


「来たな。そこの椅子に座れ」

 夢時は指示通り椅子に腰を下ろす。


「何で俺に話を?」

「デュランについて知りたいのだろう」


「デュラン……そういえば、ルーシスの双子の弟については、あまり知らないな」

 夢時の言葉に、ロジッスアは話を続けた。


「あぁ、ルーセが先代魔王から受け継いだ力。それは本来、デュランも受け継ぐはずだった」

「何で受け継がなかったんだ?」夢時が問う。

「継がなかったのではない、継げなかったのだ。奴は禁術を使っていたからな」


「……禁術?」

「当初は誰もが生きられる世界をルーセとデュランで作ろうとしていた」


「誰もが生きられる世界……」

「あの頃は、人以外の血を引く者は罪人や奴隷とされ、自由を許されなかった」

「……酷いな」夢時は眉をひそめた。


 当時の状況をロジッスアは説明する。

 ルーセとジュリスの間に夢時が生まれ、ヨシュとメリアの間にロゼナが生まれたが、帝国上層部によりジュリスは殺され、ヨーデはロゼナとメリアを連れ去った。


「ヨーデは研究に没頭し、デュランは裏切った人間を抹殺しようと妖人を使った。しかしルーセが止めた。二人は魔界を離れ、デュランは行方不明に……」


 夢時は言葉を失った。

「デュランは今も人間を憎んでいるはずだ。奴には気をつけろ」


 夢時の脳裏を言葉がよぎる。

『奴には、気を付けろ』


(デュランも、ルーシスと同じ……敵か!?)


 その時、ドアの前でデュランの声が聞こえた。

「奴から話を聞いたな」


 夢時が驚くと、デュランが現れ、睨みつける。

「嘘をつくな。早く話せ」


 夢時は仕方なく話し始めた。

「ロジッスアに言われたけど、俺は信じたい。でも、あなたのことを知らないから、知りたいとも思う」


 デュランは少し表情を変えた。

「なるほど……なら、この話を終わりにして、俺たちを見守れ」


 その時、偵察用の妖族の鳥が戻り、何かを告げる。

「冥界王の力だ。どうやらスエントが封印を解いたようだ」

「場所は?」

「サウア村だ」


 夢時はローフェルノ近くでルーシスの力を感じる。

「ルーシス!?」夢時は駆け出す。


 目の前に現れたルーシスに、夢時は声をあげる。

「ルーシス……」


 ルーシスは剣を向けるが、夢時を抱きしめる。

「こんな父親で、すまない」

「……父……さん」


 だがデュランの声が響く。

「ルーセの側から離れろ!」


 嫌な予感がし、ルーシスは首飾りから魔王の力を奪おうとした。

 夢時は動けず、背後には黒い渦が現れ、吸い込まれそうになる。


 デュランが腕を掴む。

「これが正しいと思っているのか!?」大声を上げる。


 ルーシスは答える。

「あぁ、夢時を思ってのことだ」


 夢時は涙を流し叫ぶ。

「ずっと苦しかった……それなのに、また戻って生きろっていうのか!!」

「夢時……」ルーシスは血を吐き動けない。


 デュランは剣を抜き、ルーシスに迫る。

 ルーシスは血まみれの手を見つめ、決意を語る。

「夢時には傷ついてほしくない……魔王の力を戻し、ヨーデたちを殺せば元に戻る……」


 デュランは剣を握る。

「本当にそう思うのか……」

「思う……」ルーシスは立ち上がり、剣を握りデュランに向かった。

「魔王の力、渡してもらう!!」

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