第10話

「ありがとうございましたー!」

 聖佳は明るい笑顔で、レジに立ったお客さんの会計をしていた。

 その足で席に向かうと、テーブルの上のグラスや白い丸皿を銀のトレイに載せた。そして持っていた台拭きで、綺麗にテーブルを拭くと、マスターの元に戻って来た。

「聖佳ちゃん、海里の国際教養学科に行ってるんだろう?」

「はい。将来は英語教師になりたくて。海里出れば、国立大の国際教養学科への進学も可能だと聞いたので」

「そうか。ちゃんと夢があるんだな。聖佳ちゃんは」

「母は父が亡くなった後、1人で私と兄を育ててくれました。デザインの会社を一代で立ち上げて」

「それは大変だったね」

「母は仕事人間だったから、私と兄は学校が終わってからずっと児童館で遊んだり、宿題とかしてたんですけどね」

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