第1章:北北西に進路を取れ

(1)

「あれ? あんたらがレンジャー隊の追加? 3人死んだのに、追加が2人だけ?」

「は……はぁ……」

「いや、私達以外に誰が久留米小隊の追加メンバーか知らないんですよ」

 職場復帰2日目の朝、オフィスに見慣れない顔が2人居た。

 2人とも、普段用の制服じゃなくて礼服だ。

 1人は男で、もう1人は女。まぁ、「入社」2〜3年目って所か。

 警察官サツカンってのは部署によって顔付きや雰囲気が違うって、良く言われてる。

 マル暴は、どんどん髪型・服装・雰囲気の全部が、ヤクザ地味たモノになっていき、最後には、ヤクザとつるんじまうって訳だ。

 そして、この2人は、まぁ、どこがどうと上手く説明するのが難しいが……如何にも「レンジャー隊」です、って顔付きや雰囲気だ。

「ああ、じゃあ、私は眞木桜だ。担当はパワー型イエロー副隊長ブルーも兼任だ。で、そっちの、ちゃらんぽらんそ〜な感じの奴が汎用型グリーンの大石隆太。クソ真面目そ〜なのが、同じく汎用型グリーンの池田晴紀」

「山下と言います。山下壮介。担当は索敵・狙撃型ブラックです」

「松尾萌音もねです。担当は汎用型グリーン索敵・狙撃型ブラック着弾観測手スポッターも兼ねてます」

「で、隣の島に居る2人が、特務要員ゾンダーコマンドの秋光さんと和田さん。若い方が和田さんで、おっちゃんの方が秋光さん」

 特務要員ゾンダーコマンドとは、言わば「異能力者を狩る異能力者」だが……俺が入院中に配属されたようで、人柄も能力も全く知らない。

「で、今、居ないけど、隊長レッドは……」

 眞木さんが、そう説明してる途中で、その隊長が……。

 おい……どうした?

 何だ、このゲンナリした表情は?

「隊長、レンジャー隊の補充メンバーっす」

「あ……久留米小隊の隊長の中島なかじま真一だ……よろしく……。新人さん用の事務用PCは……」

「一〇時からIT部門の技術屋さんが来てセットアップしてくれる予定っす」

「あ、そ……じゃ……命令書の電子ファイルをメールで送ってるんで、今日中に読んどいて。あと、命令書の内容に疑問点が有ったら、今日中に訊いといて。あ……えっと……」

 隊長は特務要員ゾンダーコマンド達の机の方を見て、少しデカい声を出した。

「秋光さんと和田さんも明日の任務に参加してもらうんで。命令書の確認お願いします」

「あの、これ、マジ?」

 特務要員ゾンダーコマンドの2名の内、中年の方……おそらく秋光さんってのが、この人だろう……が、そう言った。

「マジっす」

「ホントに冗談じゃなくて?」

「冗談抜きで、冗談でも何でも無いっす。ともかく、ここの支局の前線要員全員に、明日の朝一から特別任務が入ったんで、今日中にみなさん、命令書の内容を理解して、装備その他の準備しといて下さい……。あと、帰る前にブリーフィングやります。ああ、森さん」

 隊長は、庶務担に声をかける。

「はい?」

「装備の使用許可の手続とか、今日1日で結構有ると思うんで、すいません」

「わかりました」

「あの……これ、マジっすか?」

 どうやら、命令書を見たらしい眞木さんが……これまたゲンナリした表情かおと声になっている。

「さっき、秋光さんが同じ事訊いたろ。誰が訊いても同じ答しか返ってこね〜よ」

「けど……いくら何でもっ…。」

「冗談抜きで、マジ……大マジ・糞マジ・ゲロマジで、俺達でやれってさ……」

 PCのメーラーで……隊長から届いたメールに添付されていたPDFファイルを開くと……。

『「レコンキスタ」久留米支局のレンジャー隊ならびに特務要員(具体的なメンバーは添付1を参照)に対して以下を命ずる』

『組織犯罪対策 広域警察機構 久留米支局所属の猿渡喜龍よしたつ警部補の移送の護衛を行なう事』

 はぁ?

 おい、待て……。

 警察官サツカン仲間をヤクザに売ったド腐れ警察官サツカンを俺達が護衛しろだと?

 しかも、奴は別警察機構カイシャの奴だぞ……。

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