生まれ変わって別の世界で全てをやり直す夢を見たっていい。そうだろ?

Yuki@召喚獣

ガチャリ、と何かが外れる音がした。

 数字を入力してキーを解除するタイプのロックだった。それが俺の目の前にあって、俺は何故か先輩にロックを解除するように頼まれた。

 パスワードなんて何にもわからないのに。わからないはずなのに。


「……20251114」


 何となく思い浮かんだ数字だ。特に意味はない、と思う。

 ぽちぽちと数字を押し終わる。


 まぁ間違ってるだろうな。特に反応もないし。存在しない警備会社と警察に連絡がいって終わりだろ。


『パスワードを認証しました。ロックを解除します』


 ガチャリ、と何かが外れる音がした。


「……は?」


 ……え? 開いた? なんで? いや、そりゃパスワードがあってたからなんだろうけど、いやいやいや……え? なんであうの? 思い浮かんだ数字を打ち込んだだけだぞ?


「やっぱり、シャン君はここを開けられるんだね」


 呆気に取られている俺をよそに、サクライ先輩は鍵の空いたドアを開けて中に入っていく。慌てて俺もサクライ先輩についていって部屋に入った。


「やっぱりってどういうことですか?」


 部屋の中は実験台と思しき頑丈そうな机が中央に置かれていて、大量の資料が詰まった本棚が壁際にあって、本棚の反対側には今生で初めて見たデスクトップパソコンが置かれた机が配置されていた。


「さっき、僕は君に話があるって言っただろ?」

「そういえばそうですね」


 この部屋に入る前にそんなことを言ってたな、確かに。


「だからちょっと、くじ引きの結果を弄らせてもらったんだ。フィオナちゃんには悪いことをしたと思ってるけど」

「くじ引きの結果を弄る? そんなことどうやって……というかなんのためにですか? 俺に話があるならわざわざそんなことしなくても、談話室で話せばよかったんじゃ?」


 いちいちこんなところで話をしなくてもよかったはずだ。わざわざこんなところで、一体なんの話をするんだ? 他の人に聞かれたくない話とかか? 愛の告白ってことはまずあり得ないだろうしな。なんなんだ、一体。


「ま、僕くらいになるとくじのひとつやふたつ弄るのなんて朝飯前だぜ。それで、わざわざここに来たのは君がさっきのドアを開けられるのか見たかったっていうのと、あまり他の人に聞かれたくない話をしようかなって思ったからさ」


 そう言いながらサクライ先輩はデスクトップパソコンに近付いていった。パソコンの埃を軽くはたき落とすと、電源ボタンを押す。

 この施設の電気が生きているのだから、もしかしたらつくのかもしれない。と思っていたパソコンは、俺の思いと同じく電源がついた。


 それにしても、掴み所の難しいサクライ先輩の他の人にあまり聞かれたくない話って……。いったいどんな話なんだ? 全くいい予感はしないが。


「あー……シャン君、パスワードはなんだったっけ」

「KKK20251114ですよ」

「あーそうそう、ありがと」


 ……いや待て、俺今なんて言った? KKK20251114? なんでこんなところにあるパソコンのパスワードなんてすらっと口から出てくるんだ? どう考えてもおかしいだろ、それは。

 パスワードを打ち込んだパソコンはデスクトップ画面が立ち上がる。サクライ先輩はエクスプローラーを開き、そこからデータを探している。


 目当てのデータを見つけたのか、サクライ先輩はそのデータをダブルクリックした。それは一つの動画ファイルだった。


「ねぇシャン君」


 動画ファイルの再生が始まり、モニターにフルスクリーンで映し出される。その映像の中には、前世の日本によく似た街並みが広がっていた。


 サクライ先輩が俺の方に振り返る。


「僕はこれからあり得ないなって思われるような話をするんだけど、あり得ないなんてことはあり得ないってことで、一つ話を聞いて欲しいんだ」


 俺はまだどうしてこの部屋やパソコンのパスワードがわかったのか? ということや、サクライ先輩がいきなり動画を再生し始めたことに混乱していて、まともに返事をすることができずに頷き返した。

 サクライ先輩は次の言葉を紡ぐのにゆっくりと溜めを作った。もしかしたら俺がそう感じただけかもしれない。そう感じるくらい、サクライ先輩が言った言葉に俺はまた頭を混乱させられたのだ。


「実は僕、してるんだよね」


 うっすらと顔を笑みの形に変えてそう口にしたサクライ先輩の表情は、同時にとても疲れているようにも見えた――。

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