第14話 『自己催眠』とは・・・

さて、話しておこう。


自分には『俺』と『私』が存在する。

今、話をしているのが第一人格の『俺』。いわゆる『命令者』だ。


命令者は自分の後ろにいて、客観的に自分を観察している。

長年の自己催眠によって『自己分解』『自己解析』『自己制御』が出来るようになった。

自虐的な他責思考。心に傷を負わないようにするための『防衛本脳』から生まれた。


殴られようが何をされようがどうとでもない。冷静に自身の状態を『観察』する。

痛みもあれば心にも響く。でも大丈夫。大丈夫。大丈夫。

そう言い続ける。大丈夫。


第二人格は『私』。客観的視点によって生まれたロボットで『実行者』だ。

人間の形をしたロボット。感覚は『私』に任せている。

意識を集中させるとテコでも動かない。痛覚さえも遮断して忠実に『実行』する。

そう、痛覚が無くなるのだ。手を怪我しても冷静でいられる。痛くないのだ。


「マズイかな?」と『俺』が感じたら行動を中断させる。人間だからしょうがない。

無理はできない。


おかしいだろう?

こんな思考で生きていたらこうなる。

自己暗示、『自己催眠』とはこういうことだ。


ゲームが好きだったんだ。現実が嫌だったからこうするしか無かったんだ。


『自己催眠』にも欠点がある。マルチタスクができなくなる。

多角的な思考。広い視野が持てなくなる。一点集中。それが全てだ。


労働者を長くやって、経験を積んでなんとかカバーして『普通の人』になる。



努力して『普通』を目指すのだ。どんな手を使ってでも。


『異世界』から『現実世界』に帰ってきて、『自己催眠』はチートスキルと化した。

疲労感がわからなくなり、自身の限界もわからなくなった。


ポンコツ軽自動車に乗っていたのが、超高性能スポーツカーに無理やり乗せられた感じだ。しかもメーターの類は付いていないし、取扱説明書すら無い。


手探りで自身の限界を探すしか無い。

耐久性も未知数。重いものを持った時は体のチェックを行う。機械を点検するように『俺』が観察する。


そして首をひねる。


『わからない。お前はどこまで動くんだ?』

「わからない。実行しよう。やってみよう」


何かと引き換えに出る力なのか?

使い続けて問題はないのか?

寿命が縮んだりはしないのか?

突然、電源が切れたみたいにポックリ逝くんじゃないか?



どうしよう。コミュ障陰キャだった俺が私が突然こんな力に目覚めてしまった。

これをチートスキルと言わずなんと呼ぶ?


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