第11話 世界反転(2299年11月~5月)

仕事の激化にストレスが限界突破。

睡眠障害が不眠症に悪化。努力しすぎた事が原因。自力で寝ることができなくなる。


睡眠という概念が理解できなくなっていた。

頭の中は仕事のことで埋まってしまった。

寝ても仕事の夢を見る。そして飛び起きる。


会社に報告。


鬱かもしれないと精神内科に相談。鬱判定は無し。

幼少期から鬱状態で成人になったのだから、鬱であるはずがない。


ああ、最初から俺は私は鬱病だったのだ。


睡眠薬と抗うつ剤をもらい、使用したのだが抗うつ剤が効きすぎた。

午前中の記憶が無くなるレベルの効果だった。危機を感じて使用を中止した。


睡眠薬は使用を継続。『自己催眠』も使用継続。仕事を休むわけにはいかないから。


睡眠薬を使用して約5ヶ月後、体に変化が起こり始める。


体重が3ヶ月で4キロ減少。病院でMRI検査。胃カメラを飲むが異常なし。

満腹感がなくなる。食事量が合わない。いつもの量では足りないのか?


精神病院で診断を受けるが、「年齢じゃないのか?」で終わり。

そんなものなのか?


体の感覚がおかしくなり、『自己催眠』の制御がきかなくなり始める。階段を踏み外したり転ぶことが多くなる。


心とカラダのタイミングが合わない。脳内の命令よりも先に体が動く。

まるで時間が遅くなっていくような感覚になる。理解が追いつかない。


頭がぼんやりとして気持ちが悪くなる。

今まで面白かったゲームやネットが急につまらなくなる。心を満たすものが何も無い。ただボケーと天井を見ていた。


俺は私はもう終わりなのか?

まあ、悔いのない人生だったよ。これから何をして生きていけばいいんだ?

仕事かな?まだ生きてるなら仕事をしよう。


世の中の役に立つんだ。孤独に死ぬなら職場で死のう。皆に迷惑がかかるけどそれでいいや。



暇つぶしにネットで鬱病を調べた。そして、初めてPTSDの事を知った。


「コレじゃないのか?」


『気分の悪さ』の原因がわかればこっちのもんだ。

こちとらには??年間使ってきた『自己催眠』があるんだ。

自己を分析し、トラウマを見つけ出せばいい!


客観的に自分を見ることが出来れば、トラウマにだって正面から冷静に向き合える。

俺は私は『他人』なのだ。『自分が無い』からこそ出来る芸当だ。


過去を探すんだ。


ストリートビューを使って故郷を見つめ直す。

地元を離れて??年以上。風景はすっかり変わっていた。


だが変わらない物もある。ランドマークである消防署や学校はそのままだ。

頭痛が起こる場所にたどり着けばそれが原因。


そして、世界は反転した。



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