第12話  『異世界』からの帰還


さて、面白くもない長い長い前フリは終わりだ。面白い話をしよう。

嘘だと思ってもいい。信じる信じないは貴方が決めればいい。

俺は私は何も言わない。信じさせる気もない。否定も肯定もしない。

心のなかにあるもの。それが真実だ。



18月半ば。事故現場でトラウマ(高所恐怖症)を発見。


いい時代になったもんだ。遠くにいても世界を旅行できる。

俺の私の小さい頃にはこんな面白いものは無かった。スマホすら無かった。


親に連絡し、事故当時の話を聞くことに。そのときに頭を打っていたことを知る。

冷静に過去の状況を分析し、仮説を立てPTSDの事を説明する。


親は言う。


「どうして自分のことを他人のように話せるのか?どういういこと?」


説明しても理解できないだろう。『自己催眠』で「偽りの自分」を演じて生きていたなんて。


頭がスッキリした。

そして、世界が変わり始めた。


心と体の同期のズレが収まり、少しずつ力が入るようになった。

「体に慣れてきた」という感じか。


時間の流れがゆっくりに感じ始めた。


遅い、遅すぎる。


今まで1時間かかっていた事が30分で終わる。

車で運転をしていても周りの車が遅い。遅すぎて車間距離が合わない。


自分でも驚くほどに記憶力が上がっている。メモを使う回数も減った。

不思議な全能感がある。なぜ今まで出来なかったのか。


『自己催眠』で形成した人格を固定しないといけない。


そのためには他人とのコミニュケーションが必要なのだが、会話にラグがない。

頭に浮かんだことが口に出る。返答もスムーズにできる。

他人と話せば話すほど楽しい。??年間、言いたかったことが簡単に出せる。


生まれて初めて『現実世界』が面白いと感じた。生きている実感がある。


今までの「普通」がわからなくなった。自分の中の「常識」が通用しない。


そうだ、『異世界』だ。


俺は私は今まで『異世界』に生きていたのだ。

この世の地獄とも言える『障害の異世界』に。


5歳の時に『異世界』に召喚された私は帰ってきたのだ。

この『現実世界』に。




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