10食目 にんじん

 基本的にイギリスは根菜がメインである。野菜といえば根菜系。育ちやすい何かがあるのだろう。だからこそじゃがいもは主食ポジションにいられるし、


 にんじんはいつだって側にいる。


 メイン料理の付け合わせには、にんじんのゆでた物が大体ついてくる。彩りも良いし(考えているかどうかは知らないけれど)、茹でにんじんはパートナーみたいなもの。


 というわけで


 やっぱり基本的には「一袋1kg」単位で売っている。日本と違うのは、人差し指サイズの小さくて短いにんじんがたくさん袋に入っているものも売っているという所。で、一袋1ポンドぐらいで売っているから安いと思う。一袋に入っているにんじんの量は結構な量なのだ。


 安いからと一袋で買っていた時期もあったが、使い切れずに腐らせること幾度。


 一人暮らしはバラでグラム売りのにんじんが最適解だ。


 で、じゃあ何故にあんな大量に袋に入れられて売られているのか。


 それはもちろん、食べるから。


 肉料理の付け合わせ、として使われることが多いと最初に書いたが、その付け合わせの量が半端ないのだ。それはもう大量に使うのだ。


 何度かイギリス人家族のお宅で、典型的なイギリス料理というものをいただいたのだが、付け合わせのにんじんの量にびっくりしたのを覚えている。どさっと! レタスがない代わりににんじんいっぱい入れておいたよ! という勢い。ちなみに、にんじんの他には大量のグリーンピースとじゃがいもが常だ。


 そりゃ一袋使うわな、と。


 もう一つ、大量に消費する理由がある。


 生でガリガリ食べるのだ。おやつ的に。


 実習でロンドンの公立小学校にお邪魔していたことがある。1st year(日本でいう1年生)のクラスを見ていたときに衝撃だったことがあった。


 イギリスはランチタイムが13時から、ということもあり、11時ごろにスナックタイムが用意されている。小腹を満たす時間があるのだ。ドライフルーツを食べたり、ちょっとした果物を食べたり……


 にんじんを食べたり。


 ちびっこたちがカリカリコリコリ皆でにんじんを食べているという場面に遭遇したのだ。


 にんじんは、おやつ。


 その様子は大変に可愛らしかったのと同時に、にんじんが健康的おやつポジションであると知って驚いた。で、食べていたのは指の長さほどの小さいにんじん。スーパーで見かけた袋売りの小さいにんじんだった。何もつけずに生野菜を食べていて、ちびっこ達的にはどう思っているんだろうと気になった。


 というのも、イギリスのにんじんは日本のものより「セリ科」の臭いがきつい。ちょっと独特な香りが(本来の香り?)はっきりと感じられる。嫌な人には嫌かもしれないな、と。特に子どもなんかは。




 そんなわけで、イギリスにおけるにんじんは、付け合わせの常連で、おやつとしても食べるマルチプレイヤーな存在なのである。


 そりゃマクレガーさんがうさぎのピーターににんじんを盗まれて怒るわけだ。







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